2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22720045
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Research Institution | Gunma Prefectural Women's University |
Principal Investigator |
大野 陽子 群馬県立女子大学, 文学部, 准教授 (80512938)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 美術史 / 北イタリア / 聖母図像 / 樹木の聖母 |
Research Abstract |
中世に発生し、近世に消失した樹上に聖母子を表した図像「樹木の聖母」の伝播の実態は美術史研究者や図像学研究者の間でも十分に認識されておらず、その残存事例の報告、図像の伝播、変容に関する個別研究は美術史学、図像学に大きく寄与する。対抗宗教改革期にカトリック教会による宗教画像の統制の対象となった同図像の実態の把握により、宗教画像の統制と「民衆の信仰」に結びついた図像の関係を解明でき、16,7世紀における画像の受容の諸相を明らかにできよう。 24年度の海外調査では、8月中旬から9月初旬の三週間、中北部イタリアにおいて調査を行う。イタリア最大の「樹木の聖母」の巡礼地であるヴィテルボのマドンナ・デッラ・クエルチャ聖堂と、同巡礼地から派生して作られた中部イタリアの巡礼地ことにローマで現在も信徒会の活動が見られるサンタ・マリア・デッラ・クエルチャ聖堂で作例を実見し、ローマ国立図書館において関する文献収集を行った。 また平行して、前年度の調査から漏れた北イタリアの「樹木の聖母」巡礼地の調査を進めた。17世紀に創建されたベルガモ近郊の「樹木の聖母」の巡礼地インベルサーゴのサンタ・マリア・デル・ボスコ(樹木の聖母)聖堂および、ベルガモ、ミラノ周辺(トッレ・ボルドーネ、パニアコ、ヴィモドローネ等)に残る「樹木の聖母」から「ロザリオの聖母」の過渡期の図像例を実見、調査し、ベルガモ市立図書館、ミラノ国立図書館などで関連文献を収集した。 国内ではこれら収集資料の分析を行い、2013年4月28日に民族藝術学会全国大会(郡山大学)で、研究初年度から現時点までの研究成果に基づき、イタリアに現存する「樹木の聖母」巡礼地の実数調査に基づく研究発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外調査については23年度は比較的順調に進めることができたが、本務先の勤務の都合から、イタリアにおける公共図書館、古文書館が休館中である8月からの海外渡航となったため、資料収集については次年度に持ち越しが余儀なくされている。 ローマのサンタ・マリア・クエルチャ同信会の調査は上記の理由により、やや遅れており、当初予定していた共同体のシンボルとしての「樹木の聖母」図像についての研究は端緒についたばかりである。 一方、「研究業績の概要」で述べたように、二次資料頼りとはいえ、イタリア半島に現存する「樹木の聖母」巡礼地の実態調査については資料の整理、分析を進めて、成果を公表する段階に入っており、その面では研究全体としてはおおむね順調に進んでいると言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度となる25年度は、上述したような調査時期の問題やイタリアでの調査資料館の機能不全といった、種々の事情で入手しきれなかった文献収集を徹底する。特に、17世紀の対抗宗教改革期における「樹木の聖母」図像の残存の理由を明らかにすべく、昨年度から浮上してきた「樹木の聖母」から「ロザリオの聖母」図像への変容という新たな問題点についても事例調査を進めていく。その際、教会の芸術製作、「民衆の信心」の利用という観点から、ケーススタディとして同時代に積極的に宗教芸術を統制していたことが知られているミラノ大司教区内(イタリア北部からスイス南部)での「樹木の聖母」巡礼地の創建以降の沿革を同時代資料によって把握していく。
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Research Products
(1 results)