2010 Fiscal Year Annual Research Report
南アジア古代・中世における仏教説話図の受容と変容ー建築空間と表象の相関をめぐって
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22720047
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
福山 泰子 中部大学, 全学共通教育室, 講師 (40513338)
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Keywords | 南アジア / 仏教説話 / アジャンター / 舎衛城の神変 |
Research Abstract |
本研究は、南アジア古代・中世における仏教説話図の受容と変容の様相を、建築空間という意味付けられた領域としての「場」と、壁画や彫刻による「表象」の相関をめぐって提示するものである。説話図は教化、礼拝、観想など宗教実践の場として重要な機能を有する建造物に中心的に、あるいは周縁的に同居している。そこで初年度は公刊資料(J. Marshall, The Monuments of Sanchi, 3vols, 1940他)および研究代表者が現地で撮影した画像をもとに、説話主題や建造物における位置、図像の特徴について整理し、仏教経典における寺院の構成や寺院装飾の主題についての記述を整理した。また、調査期間や天候による制限もあり、現地調査はサーンチー、アジャンターのほか、ニューデリー国立博物館等において行った。またプネのデッカンカレッジ図書館、バンダルカル東洋研究所では文献収集をはかった。 研究成果として(汎アジアにおける仏教説話に関する国際学会)、代表者が従来行ってきた研究成果を統合的に併せ、特に律文献にも明示される寺院建築において重要な説話である舎衛城の神変について、アジャンターでは仏殿前室における神変説話による叙述的表現による釈尊の存在の提示から、仏殿における説法印を結ぶ釈迦牟尼仏を色身を超越して法身として位置づける方向へと展開する様相を明らかにするとともに、近世以降のタイの仏教寺院の壁画に見る同主題が一連の釈尊の生涯の一場面としてのみ扱われるのに対して、ドヴァラヴァティー時代の彫刻は、少なからず5世紀以降のインドの影響を受け、上記の叙述性と法身の両性質を有していることを併せて指摘した。舎衛城の神変は部派仏教、大乗などの枠を超える汎仏教主題であり、建築との相関から表現の特質を明示しえた点は今後の本研究の一指針といえる。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Japanese Encounters with Ajanta2010
Author(s)
Yasuko Fukuyama
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Journal Title
Indo-Japanese Joint Project for the Conservation of Cultural Heritage (Archaeological Survey of India, National Research Institute of Cultural Properties, Tokyo)
Volume: Series 1
Pages: 13-32
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