2010 Fiscal Year Annual Research Report
絵巻にみる様式の「継承」と「伝統」の創出に関する研究
Project/Area Number |
22720050
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Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
Principal Investigator |
水野 僚子 大分県立芸術文化短期大学, 講師 (30469209)
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Keywords | 絵巻 / 様式 / 伝統 / 絵所 / 継承 / 日本美術史 |
Research Abstract |
研究の目的は、平安から江戸時代に制作された絵巻の「描写」そのものに注目し、時代・絵師・工房を超えた「継承」の有り様を分析し、「継承」の意味やその行為をめぐる「人」や「場」のネットワークを解明することである。従来の絵巻の画風や様式への関心は、隆兼派・土佐派・住吉派等正統とされる絵師の作品との距離をはかる上で向けられてきたが、イメージの「継承」という新たな視座による絵巻の比較検討は、手本とされた「原本」や粉本の有無、転写本である可能性の考察、現存しない絵巻の復元にまで分析が及ぶ点で、作品の性格や意義をも探ることができると考える。このような視点は、中世絵画全体にも汎用が可能であろう。 まず初年度は、作品調査の準備を兼ねて、日本美術史・日本文学・歴史学・寺院史・中近世文化史など関連分野の先行研究、所蔵者や東京文化財研究所・東京国立博物館資料館等の研究機関における写真の所蔵状況を確認し、写真撮影やコピーにより画像を集めた。一方、絵所周辺作品の調査の依頼を行ったが、展覧会への出品や修理等の予定があり実際の調査は叶わなかった(一部は展覧会にて熟覧を行った)。そこで作品調査は次年度以降とし、まずは正統とされる絵師の様式を分類整理するために、既に入手した画像および『絵巻大成』(正・続・続々編)の画像のスキャニングを行い、データベースソフトを用いた「画像データベース」の作成を重点的に行った。データベースは樹木・雲・土坡・水・霞・人物・動物等、モチーフ毎の分類、またそれらを抽出できるように構築していったが、多少不便さも感じられることから、来年度はいくつかの画像を比較検討できるようなシステムを専門家の意見を聞きながら構築したい。また、関連史料の調査研究に関しては、宮廷や公家の政治的・文化的活動を知るために、既刊の書籍や論文等を通読するとともに、公家文書や宮廷関係史料、和歌関連資料の収集を行った。
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