2011 Fiscal Year Annual Research Report
絵巻にみる様式の「継承」と「伝統」の創出に関する研究
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22720050
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Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
Principal Investigator |
水野 僚子 大分県立芸術文化短期大学, 国際文化学科, 准教授 (30469209)
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Keywords | 絵巻 / 様式 / 伝統 / 絵所 / 継承 / 日本美術史 |
Research Abstract |
研究の目的は、平安から江戸時代に制作された絵巻の「描写」そのものに注目し、時代・絵師・工房を超えた「継承」の有り様を分析し、「継承」の意味やその行為をめぐる「人」や「場」のネットワークを解明することである。 本年度の計画は、初年度に準備した在外および国内の絵巻の調査を行い、画像資料および付属する資料等を収集することであった。夏にワシントン・ボストン・シカゴにおいて調査を依頼していたが、3月の東日本大震災の影響で、実際に秋まで予算の交付が確定しなかったため2月に延期したが、日程の調整や展示の都合等で希望作品の調査の許可が下りなかった。3月にNYとプリンストンで調査の許可を得、渡米の手配も行っていたが、家庭の事情により渡米不可能となった。以上の理由により海外調査は来年度に行うよう予定を変更した。国内に関しても、関東以北の美術館では調査が困難となり予定していた作品の調査が行えなかったことは残念であったが、近畿地方(和歌山・大阪・京都)での調査は行うことができた。以上のことから当初の予定を変更し、昨年調査してきた日本文学・歴史学・寺院史・中近世文化史など関連分野の資料調査を継続し、情報を充実させるように努めた。また、データベースに関しては、より比較検討がしやすいように、新たに基盤を整備し、もとのデータベースからのデータの移動等を進めた。 特に部分的な比較画面をだけでは、構図の影響関係はわからないため、画面をスクロールして、絵巻全体と細部をともに見られるようなシステムも作成したことは、大きな成果であった。関連史料の調査研究は、昨年度行ってきた調査を継続して行い、特に和歌関連資料の収集を行った。一方、近現代における絵巻の受容や絵巻が担う意味を考察するため、明治から現代にかけて発行された美術史概説書、美術専門書、美術教科書等を網羅的に調査した。そしてその成果の一部を論文において、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の予定では夏に集中的に海外で調査を行う予定であったが、東日本大震災の影響で秋まで予算がつかず行えなかった。予算が決定したのちに改めて2月に調査を依頼したが、各美術館の展示等の事情で希望していた作品の調査が叶わなかった。また、国内に関しても、震災の影響で作品や蔵の調査中で調査不可能というところが多く、当初予定していた作品の多くが、調査できなかった。このような状況であったため、作品調査については進展がかなり遅れてしまったが、その分資料整理やデータベースの構築に時間を使うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度調査が行えなかった、国内外の作品について、調査を行うことが、最も大きな目標である。既に調査依頼をしており、夏から秋、来年の2月から3月には調査ができる予定である。調査を行うことと並行して進めるのは困難も伴うが、調査後の資料整理やデータベースにできるだけその成果が反映できるよう、補助をしてくれる人材を登用することも考えつつ、進行を早めるようにしたい。また、中世宗教史、民俗史の研究者との研究会の実施も予定している(既に了承済み)。関連諸分野の研究者との連携をはかり、そこで得られた意見等を取り入れながら、論文を作成していきたい。
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