2012 Fiscal Year Annual Research Report
絵巻にみる様式の「継承」と「伝統」の創出に関する研究
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22720050
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
水野 僚子 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (30469209)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 絵巻 / 中世 / 大和絵 / 伝統 / 継承 / 日本絵画 |
Research Abstract |
前年度までの史料調査およびデータベースの構築を継続するとともに、最終年度の本年は、これらを整理する作業と論文作成の準備を中心に行った。特にデータベースは、検索システムの整理を行い、それを用いた図像やモチーフに関する分析・検討も行った。類似する図像に関しては、各絵巻の詞書の記述と照合し、記述の有無やその表現を確認し、備考としてデータベースに新たに反映させた。 作品調査に関しては、メトロポリタン美術館、バーク財団、ニューヨーク市公共図書館、個人所蔵の絵巻類、絵本類の調査を実施した。特に中世から近世に制作された御伽草子系絵巻、白描系物語絵巻を中心に、熟覧および画像・資料収集が実施できたことは大きな成果であった。また歌合絵巻の調査が行えたことも、意義深かった。膨大な類品のある歌合絵は、人物像の類型化や継承に関する諸問題を考える上で示唆的であった。 国内では、金刀比羅宮や個人所蔵の、冷泉為恭や田中訥言等復古大和絵師による絵巻の摸写や粉本の調査を重点的に行った。膨大な摸写類は、物語、高僧伝、社寺縁起、記録系絵巻等ジャンルは多岐にわたり、また原本の絵師の画系も様々であり、彼らの関心、つまり彼らが「古典」とみなしたものが、特定の時代や画題と結びつかないことが理解できた。また同じ絵巻の摸写を、しかも白描と著色で繰り返し行ったのは、図像や画風だけでなく配色や彩色方法を学習しようとした姿勢の表れであるが、同時にそれは二次的作品の創出であったと考えられる。それはまさに典拠のある「古典」に基づいた新たな「伝統」の創出であり、それによって自らを正統な絵師に位置づける行為であったと考えられる。なお、源氏絵や伊勢絵に関しては、又兵衛派の作品の調査研究を行い、その成果を論文としてまとめた。王朝文学の絵画化では、流派を超え図様や画風が継承されていることから、画題と様式が同時に受容されていたと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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