2011 Fiscal Year Annual Research Report
植民地朝鮮における韓国近代工芸―浅川伯教の活動を中心に
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22720052
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Research Institution | Osaka City Cultural Properties Association |
Principal Investigator |
鄭 銀珍 公益財団法人大阪市博物館協会, 大阪市立東洋陶磁美術館, 学芸員 (20531263)
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Keywords | 陶磁史 / 韓国近代 / 浅川伯教 / 浅川巧 / 産業陶磁 |
Research Abstract |
浅川伯教・巧の兄弟は、柳宗悦の朝鮮美術工芸への橋渡しの役割を演じ、日本の「民藝」運動発生の契機を作った人たちである。このうち伯教は、とくに韓国陶磁史の先駆的研究者としてもきわめて重要である。本研究は、浅川伯教の活動の全体像を明らかにしようとするもので、今年度も引き続き、浅川伯教の未発表原稿のコンピュータ入力、各種新聞、雑誌からの関係記事収集などの文献調査、韓国などでの現地調査並びにこれらの研究成果の公表に向けての準備を進めた。 1.文献調査 (1)一昨年に続いて、浅川伯教の未発表原稿全体の目録をさらに補充し、入力作業を進めた。 (2)浅川氏のご遺族から寄贈された作品、資料、絵画約700点の撮影を終え、データ化した。 (3)朝鮮総督府による窯業政策に関する文献を調査した。 これによって、近代的な韓国陶磁研究の草創期について、また伯教の作陶の背景について、全体的な状況を知ることができた。 2.現地調査 (1)韓国調査:韓国国立古宮博物館で、戦前の日本産高級食器について調査を行い、またその目録の一部を入手した。 (2)肥前、瀬戸・岐阜の生産地:陶磁器関係の博物館や、また古老からの聞き取り調査など行い、戦前の日本での大量生産品と朝鮮半島との関係を、ある程度明らかにすることができた。 以上のふたつの調査によって、朝鮮半島への日本近代陶磁器(高級品・粗質品)について、基本的な状況を知ることができた。欧米向けの日本近代陶磁の研究は多いが、朝鮮半島への流入は、従来、整理されていなかった領域である。 3.調査研究成果の公表 以上、近代的な韓国陶磁研究の草創期について全体像を一定度明らかにすることができ、その中に伯教を位置づける論文〓銀珍「朝鮮陶磁と浅川伯教」、「フィールドワーカーとしての浅川伯教」を執筆し、また市民講座などで一般向けに成果を報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、本年度は浅川伯教の未発表原稿のコンピュータ入力を行う予定だった。しかし、1000枚以上の原稿を入力するには大変時間がかかり、行うことができなかったが、その他は順調に進んでいる。そして、論文2本を執筆し、浅川伯教の陶磁研究および陶芸家としての到達点を明らかにしつつ、それを、当時の日本人研究者の研究動向(とくに民俗学領域)のなかに位置づけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の最終年度となる24年度には、これまで執筆してきた論文を基礎として、全5章の予定で浅川伯教論を執筆する予定である。それは、浅川を通して、当時の朝鮮半島における陶磁産業の状況を明らかにするものでもある。なお、浅川伯教の未発表原稿のコンピュータ入力や資料の整理に当たっては、大学院の学生の協力を得ることができ、本年度は少し整理が進むと思われる。
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