2011 Fiscal Year Annual Research Report
学術標本における保存修復法の確立~修復材料及びレプリカ製作法を中心に~
Project/Area Number |
22720054
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
菊池 敏正 東京大学, 総合研究博物館, 特任助教 (10516769)
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Keywords | 文化財 / 保存修復 / 標本 / レプリカ / 伝統技法 / 彫刻 / 3D / 美術 |
Research Abstract |
本研究は、これまで修復という概念を持たなかった大学博物館所蔵の学術標本に対し、修復及び復元プロジェクトを設立し、実践的な作業を行いつつ学術標本に対して素材、分野ごとに修復法の確立と、3D入出力装置を使用した新たな学術標本(レプリカ)の作成を目的とするものである。 文化史系学術標本には多くのレプリカが存在する。国内では明治期に美術教育の一環として、竹内久一・新納忠之介らによって彫刻分野で盛んに行われていたが、それ以降ほとんど行われることはなかった。一方でロンドン ヴィクトリア&アルバート博物館では、主に世界中の彫刻文化財のレプリカを制作し展示しており、レプリカに対する修復も進められている。レプリカとは本物に影を潜め、教育の補足的な役割を担うものであったが、現在はそのレプリカの歴史的価値を見直さなければならないと考える。博物館において文化財のデータベース化や3Dレーザースキャニング計測によるデータ保存などが行われる中、レプリカ作成による保存という方法も一手段として有効なものであり、海外調査としてロンドン、パリのミュージアムを調査しレプリカの保存と制作の現状調査を行った。 昨年度の海外での調査と、国内の文化財修復技術を基盤とするこれまで手法を合わせ、学術資料に対し最も有効な修復素材等を検討した。また、修復に伴い学術標本の3Dレーザースキャニング計測を実施し、データを基に別素材での複製を作成している。昨年度に続き、東京大学博物館、及び東京大学数理科学研究所所蔵の数理模型について損傷の激しいものを対象に調査を行い、同素材による複製の制作及びオリジナルを参考にした復元的修復を進めている。素材の変更を行うには3D入出力装置を使用することにより、非常に正確な短時間で制作することが可能となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東京大学数理科学研究科に所蔵される数理模型について、ドイツで制作された石膏による模型を調査したところ、破損の激しいものも含め、109個収蔵されている事が解った。それらについてのレプリカによる保存を進めているが3年計画の2年目にあたる昨年度は、70個以上の型取りを完了した。今後さらに進め、本研究終了時には、全てにおいてレプリカの完成が想定される。また、それらの展示公開も計画している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の課題として、レプリカの制作を進めつつ、様々な種類の標本について現状の調査を行い、収蔵品の種類敵にわたる大学博物館での最も有効な保存方法を、検討する。 また、研究を推進していくにあたり大きな変更点は無いが、レプリカとオリジナルとの識別の基準を設定していく必要がある。
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