2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720065
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Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
沼口 隆 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (70453529)
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Keywords | 音楽史 / 楽譜 / ミニチュア・スコア / データベース / 音楽学 |
Research Abstract |
当該年度の目標として「データベースの構築と国内資料の情報入力」を掲げていたが、この点は充分に達成できた。 まず、オイレンブルク・ミニチュア・スコアのレパートリーの変遷を明らかにするための基礎的な作業として、データベースの構築を行い、データの入力を進めた。国立音楽大学附属図書館所蔵のスコアに関しては、すでに全データを入力済みである。また、過去のカタログの存在が判明したため、1909~2010年の間の計8冊のカタログを入手し、そのうちの5冊の情報の入力・照合作業が終了した。入力した曲目数の総計は、本報告執筆時点で1760件である。照合・確認の作業が多いので、実際に処理したデータ数は、曲目数の数倍に上ると考えられる。また、交響曲限定ながらスコア所収の解説を集めた書籍(The Musician's Guide To Symphonic Music)とのデータの照合も終了した。 もっとも古いカタログ(1909年版)と最新のカタログ(2010年版)の情報の入力が済んでおり、そのレパートリーの違いを導き出すことができるので、その間の「変遷」はともかくも、もっとも大きな「差異」については検証が可能となった。その意味で、楽譜の出版状況という観点から音楽のレパートリーの変遷を明らかにするという全く新しい試みは、これまでのところ順調に進行している。 海外調査では、上述した8冊以外の過去のカタログの所在を突き止めたほか、カタログだけでは厳密な確認ができなかった楽曲について、スコアの現物と照合ができた。また、オイレンブルク社の初期の社史に関しても、貴重な情報を入手することができた。同時に、オイレンブルク社の第2次大戦前の資料が戦火によって完全に失われたことも明らかになったが、そうであればこそ、初期の出版状況が徐々に明らかになってきていることの意義は大きいと言える。
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