2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720065
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Research Institution | Kunitachi College of Music |
Principal Investigator |
沼口 隆 国立音楽大学, 音楽学部, 准教授 (70453529)
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Keywords | 音楽史 / 楽譜 / ミニチュア・スコア / データベース |
Research Abstract |
当該年度の目標は、オイレンブルク社のミニチュア・スコアに関するデータベースを完成へと近づけることにあった。現在までに、1773点のスコアの情報が入力されており、詳細な年代が特定できない2点を含め、11点のカタログの情報と照合が済んでいる。処理できた情報量は、充分な水準に達していると言えるだろう。一方で、ミュンヘン国立図書館での調査により、20世紀後半のカタログがさらに数点見つかったが、研究計画全体の進行に鑑みると、これらのカタログのデータを研究対象に含めるか否かについては検討を要する。 新たに生じた問題として、データベース内での表記の不統一がある。このため、当該年度の後半には、作曲者名や曲名などを統一する作業を進めた。まだ完結していないが、近い将来に完結する見込みである。これにより、同一曲の複数の稿が出版されているケースなど、複雑な問題にも対処してゆくことが可能になると考えられる。 オイレンブルク社が買収したペイン社とドナジョースキー社のレパートリーの成立過程については、まだ解明には至っていない。とりわけ後者については、ウィスリング&ホフマイスターのカタログにも、音楽雑誌記事の総合目録にも一切記載がなく、詳しい情報を得ることは相当に困難だという見通しになっている。 海外調査では、上記のカタログ所在の特定のほか、オイレンブルク社やペイン社のスコアの現物確認を行った。カタログ記載の情報では、作曲者や作品の詳細が特定できなかったスコアのうち、かなりのものが当時の新作だったことが判明し、出版社側に新進の作曲家を売り出すという方針があった可能性が浮上した。これは、今後の研究において、ひとつの重要な観点となるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベースの情報量は充実しているが、表記統一という新たな問題が生じたために、作業に遅れも見られるため。ただし、データベースの情報整理が進めば、レパートリーの変遷過程の解明という研究全体の目的には、大幅に近づくことができる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
ヴァーグナーやブルックナーなど、一部の作曲家の作品に関しては、スコアの比較によって稿の違いを明らかにしなければならない。ただし、あらゆる時代のスコアが閲覧できるわけではないので、いつの時代に出版されたのがどのような稿であったのかを特定するのは困難な場合もあると考えられる。ひとつの作品の複数の稿が出版されている場合については、データベースの構築を依頼している人物にも相談の上、効率的な情報整理の方法を探りたい。 データベースの表記統一が完結すれば、レパートリーの変遷について整理する手段は整ったとも言える。上記の点も含め、細部には問題が多く残るであろうが、まずはレパートリー変遷の概要を掴むことを第1目標とし、データの分析を迅速に進めたい。
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