2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720068
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
埋忠 美沙 早稲田大学, 演劇博物館, 研究員 (20468846)
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Keywords | 阿竹黙阿弥 / 四代目市川小団次 / 江戸歌舞伎 / 幕末 / 合巻(正本写) / 歌舞伎台本 / 都鳥廓白浪 / 桜清水清玄 |
Research Abstract |
本研究は、歌舞伎作者・河竹黙阿弥と幕末の名優・四代目市川小団次の提携の実態を、文字資料と絵画資料を活用して解明することを目的とする。二年目の本年度は、黙阿弥の初期作『都鳥廓白浪』とその原作『桜清水清玄』の作品研究と、未翻刻台本と正本の翻刻をおこなった。 『都鳥廓白浪』の初演は嘉永7(1854)年3月、黙阿弥が人気作者になる以前に書かれた初期作だが、小団次と提携するきっかけとして歌舞伎史に必ず記されている、極めて重要な作品である。本作は『黙阿弥全集』に収録されるも、現行上演されるのも三幕のみで、研究書や辞典には「全三幕」と記されてきた。 しかし本来は全六幕の作品であり、従来公開されていない三幕の台本が、演劇博物館に所蔵されている。そこで作品の全貌を紹介するため、未翻刻台本を翻刻した。黙阿弥は本作をきっかけに自身の作風を確立したが、文政13(1830)年上演の2代目勝俵蔵作『桜清水清玄』の書き換え狂言であり、原作と比較することで黙阿弥の作劇法の分析が可能となる。これまで『桜清水清玄』の台本は翻刻されていなかったため、松竹大谷図書館所蔵の台本(全六冊)を翻刻した。また『都鳥廓白浪』の初演は、「お俊伝兵衛」という芝居と絡み合いながら、交互に展開する構成をとっていた。この「お俊伝兵衛」の件の台本は現存しないが、初演当時に制作された合巻(正本写)は「お俊伝兵衛」の件も併せて収録している。台本には残らない情報を記録する貴重な資料であることから、合巻の翻刻も併せておこない、作品の全貌を詳らかにした。そのうえで『都鳥廓白浪』の作品分析をおこない、黙阿弥の特徴的な作劇手法(世話描写の加筆、合理的な筋立て、など)が本作で確立したことを明らかにした。
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Research Products
(3 results)