2011 Fiscal Year Annual Research Report
フランス音楽政策の全体像―「現在の音楽」分野にみる対立と統合の構造―
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22720072
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Research Institution | Mukogawa Women's University |
Principal Investigator |
永島 茜 武庫川女子大学, 音楽学部, 講師 (00509169)
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Keywords | フランスの音楽政策 / フランスの文化政策 / 音楽政策 / フランスの音楽支援 / 文化政策 / 現在の音楽(musiques actuelles) |
Research Abstract |
当該年度は、文献資料及び現地調査からフランスにおける「現在の音楽」に関する施策を調査する研究計画であった。まず文献資料については、「現在の音楽」に対する施策がどのような背景から講じられるようになったのかを検討した。ここでは、音楽政策の対象を「現在の音楽」にまで拡大したモーリス・フルーレ文化省音楽舞踊部長(1981年就任)に注目し、彼が実施した施策や発言などから、音楽政策は音楽の支援のみならず「社会政策としての音楽政策」という考え方を持っていたことが理解された。これは、フランス人の音楽行動を調査し、その背景には(1)地理的、(2)社会的、(3)音楽的な不平等の存在があることを指摘し、音楽の不平等を社会的な問題として認識したことによるものと考えられる。「音楽の民主化」とは、政府が全ての音楽活動を等しいものとして認知し、国民が音楽をすること」を支援することである。それまでのどちらかというと芸術音楽の専門家に目を向けた施策から、特別に芸術音楽の専門的知識や鑑賞眼を持たない国民が主体となって音楽活動をできることに視点を置いた施策に転換されたといえる。この考え方を象徴しているのが毎年夏至に開催される「音楽の祭り」であり、その後「現在の音楽」に関する各種委員会や審議会が創設されていくことになる。1995年には地方公共団体も参加して「公共政策とアンプ音楽国民会議」が発足し文化大臣も議論に加わった。1998年には文化省が「現在の音楽」国民会議を設置し、2006年からは「現在の音楽高等審議会」で様々な議論が行われてきたが、2011年9月に同審議会の解消が発表された。フランスは目下大統領選挙を控え、その結果により「現在の音楽」政策にも影響が現れることと予測されるが、次年度はこれらの委員会における議論を追うとともに、同分野に対する現在の施策の動向について検討したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
体調の問題から、2011年(1~3月)に予定していた現地調査に赴けず、また学会誌への投稿もできなくなってしまった。当初計画よりも若干の遅れを認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、取得予定である育児休暇の後、直ちに現地調査等の手配を行うとともに、休暇中にあってもできる限りの文献調査などを進める。また、当該期間中にフランスは新大統領が決定されるため、研究対象である文化政策や音楽政策に対する大きな変化も有り得ると予想される。これらに対してもインターネット等を活用し、情報収集を怠らないよう努めたい。
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