2011 Fiscal Year Annual Research Report
伝統的技術の戦略的継承法―現代インドの手工芸文化を中心とした民族芸術学的研究
Project/Area Number |
22720075
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
上羽 陽子 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 助教 (10510406)
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Keywords | 民族芸術学 / 手工芸文化 / 染織研究 / インド / 伝統的技術 |
Research Abstract |
本研究は、ものづくりの.「作りの手個人の創意工夫」や「伝統的技術の戦略的継承法」に実践的にアプローチし、製作者が伝統的形態の継承と現代的な要素の採用をいかに戦略的に選択しているか観察分析をおこない、その製作と流通の歴史を掘り起こすことによって、「伝統的」とされてきた手工芸品の社会・文化的意義をめぐる従来の視点を大きく変えることを目的とする。 本年度は、初年度のインド、グジャラート州アーメダバード県における予備調査をふまえて、2回の本調査を主におこなった。1回目の調査(平成23年9月12日~11月21日)では、アーメダバード県の染布の工房における女神儀礼用染色布の製作状況、販売状況の調査をおこなった。そこでは、手工芸品の「伝統」が、製作者や販売者の戦略によって選択されながら継承されている様子を観察した。2回目の調査(平成24年2月20日~3月11日)では、これまでグジャラート州でおこなってきた手工芸品の製作現場における調査研究をふまえ、デリーとムンバイという大都市における商品としての手工芸品を対象に、伝統的技術が商品としてどのように継承されているのかについて調査をおこなった。資料収集に関しては、アーメダバード県およびデリーやムンバイにおいて、研究対象に関係する古文書渉猟も遂行し、手工芸文化を取り巻く現状の動向を、包括的に把握した。 成果について、その一部を『国立民族学博物館研究報告』に投稿中である。引き続き来年度も、成果を民族藝術学会、意匠学会で研究発表することで、本研究をより広い地域的、理論的視野から検討し、学会論文を『国立民族学博物館研究報告』『民族藝術』『デザイン理論』などのジャーナルに投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度におこなった予備調査をふまえて、インド・グジャラート州における本調査を2回おこなった。そのことにより、ものづくりの製作者がいかに伝統的形態を継承しているのか、そしてそこにどのように現代的要素戦略的に採用しているのかという当初の目的に対し、今年度におこなった学会や研究会での発表によって議論を深めることができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる来年度は、論文執筆や学会発表準備といった成果を取りまとめる作業をおこなうとともに、その過程で浮かび上がってきた疑問点や不明点を明らかにするための補充調査をおこなう。これらの研究の成果は、『インド染織の現場』(仮題)というタイトルで、日本語で刊行する予定である。それによって、「伝統的」ととらえられがちな手工芸の社会・文化的意義をめぐるこれまでの視点とは異なる、民族芸術学的視点によるモデルを提示できるものと考える。
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Research Products
(9 results)