2010 Fiscal Year Annual Research Report
仏教類書とその受容史―説話文学研究のための基礎研究として―
Project/Area Number |
22720076
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本井 牧子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 助教 (00410978)
|
Keywords | 金蔵論 / 法苑珠林 / 類書 / 正倉院文書 / 説話文学 / 日本霊異記 / 今昔物語集 / 敦煌 |
Research Abstract |
本研究は、日本説話文学における漢訳仏典の影響を考察するための基礎研究として、中国撰述の仏教類書の諸本調査を行い、日本におけるその受容の実態を明らかにしようとするものである。平成22年度の研究内容およびその成果は以下のとおり。 (1)『金蔵論』・『法苑珠林』の日本における受容に関する調査・検討 正倉院文書を中心とする古記録・古目録に散見する関連記事を整理・検討した。その結果、『金蔵論』は光明皇后発願の五月一日経を嚆矢として、奈良朝の一切経や経蔵に収められていたことが確認できた。一方で『法苑珠林』については、奈良から平安初期にかけては受容の痕跡を見いだせなかった。『日本霊異記』や『今昔物語集』といった平安時代の仏教説話集研究においては、『法苑珠林』との関連がしばしば言及されてきたが、編纂当時の受容状況からは、『法苑珠林』が参照された可能性よりも南都の経蔵に収められていたことが確実な『金蔵論』の影響をあらためで検討する必要性がさらに高まった。 (2)敦煌本仏教類書の調査 フランス国立図書館蔵ペリオコレクションの調査を行った。『金蔵論』関連資料および『諸経要集』などの現物調査を行い、書誌データをまとめ翻刻を作成した。 (3)『金蔵論』散佚部分の復元試案作成 『金蔵論』の散佚巻の内容を『義楚六帖』などの逸文などを利用して推定し、復元試案を作成した。復元された全体像からは、『金蔵論』が善悪の因縁を説くことで在俗の人々を仏道に導くという編纂目的のもとに、章や説話を効果的に配列するものであることが浮かび上がってきた。
|