2011 Fiscal Year Annual Research Report
仏教類書とその受容史―説話文学研究のための基礎研究として―
Project/Area Number |
22720076
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
本井 牧子 筑波大学, 人文社会系, 助教 (00410978)
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Keywords | 仏教類書 / 金蔵論 / 法苑珠林 / 諸経要集 / 敦煌写本 / 朝鮮版 / 唱導 / 今昔物語集 |
Research Abstract |
本研究は、日本説話文学における漢訳仏典の影響を考察するための基礎研究として、中国撰述の仏教類書の諸本調査を行い、その受容の様相を明らかにしようとするものである。平成23年度の研究内容およびその成果は以下のとおり。 (1)敦煌煙本仏教類書の調査 本年度は大英図書館蔵スタインコレクションの『法苑珠林』ならびに『諸経要集』を中心に現物調査を行った。前年度に行ったフランス国立図書館蔵ペリオコレクションの調査結果とあわせて、敦煌写本中の『法苑珠林』および『諸経要集』について、書誌データや引用箇所を一覧した基礎資料を作成した。これらの写本のなかには、規範意識にもとづいて書写されたものだけでなく、簡約本や抄出本が多く存在することが確認できた。特に抄出本のなかには、仏教類書由来の讐喩因縁を抄出、再構成するものもあり、唱導における仏教類書の受容の様相を解明する手がかりとなる。 (2)『金蔵論』関連資料の調査 『金蔵論』の逸文探索は本研究の重要課題のひとつであったが、天理図書館所蔵の朝鮮版『釈氏源流』の余白に、『金蔵論』からの抜書とみられる書入を確認することができた。これは、朝鮮版刊行の17世紀まで朝鮮半島では『金蔵論』が読まれていたことを示す貴重な資料であり、『金蔵論』が刊本一切経の刊行後は顧みられなくなったという従来の見解について、新たな視点からの再検討を迫るものである。 研究成果については、昨年に引き続き東アジア宗教文献国際研究集会を荒見泰史、近本謙介両氏と共同開催し、国内のみならず、中国、台湾、韓国の研究者と知見を共有した。
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