2010 Fiscal Year Annual Research Report
鎌倉中期の古典注釈に現れる言語意識についての総合的研究
Project/Area Number |
22720080
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡崎 真紀子 静岡大学, 人文学部, 准教授 (30515408)
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Keywords | 鎌倉中期 / 古典注釈 / 言語意識 / 歌学 / 悉曇 / 仙覚 / 万葉集註釈 |
Research Abstract |
本研究は、鎌倉中期の文永~永仁年間に成立した古典注釈書を総合的に検討し、当時の言語意識について明らかにしようとするものである。すなわち、万葉集研究に画期をなした仙覚『万葉集註釈』、源氏物語注釈書として注目される『光源氏物語抄』『紫明抄』、『三流抄』をはじめとする古今集注釈、そして歌学および思想の書として見逃せない『野守鏡』などを、ジャンル横断的に考察の対象とする。 本年度はとくに、仙覚『万葉集註釈』を中心として研究を進めた。まず、同書の本文について仁和寺本をもとに、冷泉家本等の諸本と照らし合わせながら翻刻をすすめた。次に、同書のなかから、悉曇学に由来する注釈方法が見られる記述を抜き出してデータ化した。たとえば、仮名の一字一字に意味をあてることで語句の解釈を導き出すいわゆる音義説の方法があらわれている記述や、五十音図の同じ行・同じ段の音が交替すると考える相通説にもとづく方法が洗われている記述などである。 そして、上記のようにして抜き出した『万葉集註釈』の記述を、中世以降現在にいたる『万葉集』の注釈書の説と比較し、仙覚の考えの独自性を明らかにした。ついで、仏教書や悉曇学書の記述と比較して、仙覚の注釈方法の根底には、密教からくる言語思想や言語意識が深く浸透していることを実証的に明らかにした。
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