2011 Fiscal Year Annual Research Report
鎌倉中期の古典注釈に現れる言語意識についての総合的研究
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22720080
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡崎 真紀子 静岡大学, 人文学部, 准教授 (30515408)
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Keywords | 鎌倉中期 / 古典注釈 / 言語意識 / 歌学 / 悉曇 / 仙覚 / 万葉集註釈 |
Research Abstract |
本研究は、鎌倉中期の文永~永仁年間に成立した古典注釈書を総合的に検討し、当時の言語意識について明らかにしようとするものである。すなわち、万葉集研究に画期をなした仙覚『万葉集註釈』、源氏物語注釈書として注目される『光源氏物語抄』『紫明抄』、『三流抄』をはじめとする古今集注釈、そして歌学および思想の書として見逃せない『野守鏡』などを、ジャンル横断的に考察の対象とする。 本年度はとくに、仙覚『万葉集註釈』に現れる悉曇学の考え方にもとづく記述と、院政期から鎌倉中期にかけての悉曇学書の記述との比較および分析的考察を中心として研究を進めた。前年度において、仙覚『万葉集註釈』のなかから悉曇学に由来する注釈方法が見られる記述を抜き出してデータ化する作業はおこなっていた。本年度はその抜き出したデータをもとに、明覚『悉曇要訣』や了尊『悉曇輪略図抄』の記述との共通点と差異を、より具体的に検討したのである。 上記の検討から、仙覚の注釈に特徴的に見られる音義説的な叙述(一字一字に意味をあてることで語句の解釈を導き出す方法)が、悉曇学や密教において重視された種子の考え方に通ずるところがあることを明らかにした。 悉曇学は、古代インドの言語である梵語・梵字の音韻や意味に関する学問である。その考え方を日本の言語に関する学問にとりいれることは、日本の言語のあり方に対する自覚を芽生えさせるものであったのではないか。仙覚の言語意識から、その一端をうかがい知ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
鎌倉中期の古典注釈の資料と、悉曇学の資料の収集および比較検討を堅調に進めることができているから。当初の研究計画で挙げた目標のすべてを達成できていない部分もあるが、その分、達成した部分についての考察が計画以上に精緻になされており、総じて、研究はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は本研究課題の最終年度になるので、これまでの研究を深化させるとともに、研究期間に実践した成果をまとめることにも力を注ぐこととする。 研究計画の変更はとくにないが、進捗状況を見ながら、おおむね来年度上半期は具体的な研究を継続し、下半期は研究成果をまとめることにあてる予定である。それが、もっとも効率的に研究を進めるための推進方策であると考えられる。
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Research Products
(3 results)