2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720084
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
久岡 明穂 奈良女子大学, 大学院・人間文化研究科, 博士研究員 (20437510)
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Keywords | 読本 / 近世文学 / 日本文学 |
Research Abstract |
本年度(平成22年度)は、以下のような調査・研究を行った。同志社大学蔵の郵書目録については、約半分を翻刻し、随時入力を行った。読みにくい人名、不明の人名が多いため、同時代の人名がわかる他の資料を使って読み進め、翻刻を完成し、次年度に発表する予定である。読本と水戸学との関連を主題の上から考察するにあたり、馬琴の『頼豪阿闍梨怪鼠伝』を検討した。『頼豪阿闍梨怪鼠伝』の頼豪の霊は、偶発的に生じるものではなく、作品で描かれる人物の心と関連して出現することを論じた。馬琴の読本では、一度死んだはずの人物が活躍する設定で描かれることが多い。人間の死後については、江戸時代には、馬琴が参考にした新井白石をはじめ、本居宣長などの国学者の間でも重要な議論がある。馬琴の読本については、水戸学による武士論とともに当時の人々の死後の世界についての思想との両面から検討することにする。馬琴作品には、歴史観国学的な尊皇思想や神道観と儒学的な勧善懲悪思想と武士論との両方が見られることは、水戸学の持つ特質であると考えられる。 馬琴以外の作家としては都賀庭鐘の『莠句冊』第三編について検討した。そこでは、都賀庭鐘が、古代国家を具体的に『日本書紀』に描かれる国家をもとに描いていることを明らかにした。『莠句冊』第三編では、住吉神社のような数カ所に存在する神社をどう扱うかという問題も含まれている。 次年度からは、水戸学の資料を調査し、読本との関連をさらに検討する。
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