2011 Fiscal Year Annual Research Report
明治期における翻訳文化と幻想文学の相関に関する研究
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22720086
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Research Institution | Naruto University of Education |
Principal Investigator |
野口 哲也 鳴門教育大学, 大学院・学校教育研究科, 准教授 (90533000)
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Keywords | 翻訳文学 / 幻想文学 / 翻訳研究 / トランスレーション・スタディーズ / 井上勤 / 森田思軒 / 黒岩涙香 / 翻案 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本近代の文化的制度の成立過程に決定的な形で関与した<翻訳>が幻想文学にどう作用したのか、また逆に幻想文学の表現機構が日本近代の言語観や精神構造にいかなる形で関与したのかを明らかにすることにある。既に原文/訳文という単純な図式や「意味の再現」といった発想が廃棄される契機が見出され、<翻訳>の創造性が本格的に問われはじめてきているが、本研究はさらに、文学における幻想性が、言語的な移動・変容・越境をもたらす契機として翻訳と理論的に近接することを実証し、当該分野において新たな文化論的視野を開示することをねらいとしている。以上のような展望のもと、従来の文学史観では周縁領域に位置づけられ、あるいは埋没していた明治期の幻想文学テクストを新たに発掘しながら分析の対象とし、<翻訳>という観点から歴史的・理論的な考察を加えてゆく。 平成23年度は翻訳に関する国内外の研究文献を整備・講読し、昨年度より行っている資料整備を継続しな。明治期の新聞雑誌媒体を中心に翻訳テクストを取りあげ、それが幻想文学の方法としていかに受容・洗練されているかについて個別の事象に即して分析・考察を加えている。 具体的には、従来の文学史記述では周縁に埋もれている森田思軒や井上勤、黒岩涙香らによる翻訳(翻案)テクストを対象化し、文化史的・政治的観点から分析を加えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度に本格的に着手した資料の調査・収集によって、本研究が射程圏としうる対象が広範に渉ることが明らかになったが、それはあらかじめ想定していたことでもあるので、本年度は翻訳に関する国内外の研究文献を整備・講読しながら、昨年度より行っている資料整備を継続した。また、最終年度の課題への連続も視野に入れながら、同時代の文学・文化のありかたに大きな影響を与えて主導したと目される作品群や批評的言説を取りあげる準備をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では個別的な考察に先立つテクストの発掘と選定という文献学的な課題も重要な位置を占めているので、初年度および今年度はその基礎的作業にあたる部分を行ったが、「最終年度である平成24年度もこの成果を踏まえ、明治期における広義の<翻訳>的営為の実態的な広がりについて基礎的文献調査を中心とした実証的研究を継続して行く。
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Research Products
(3 results)