2012 Fiscal Year Annual Research Report
中近世の尼寺における文芸・文化研究―比丘尼御所を起点として―
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22720090
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
恋田 知子 国文学研究資料館, 研究部, 機関研究員 (50516995)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2013-03-31
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Keywords | 比丘尼御所 / 物語草子 / 陽明文庫 / 仮名法語 / 奈良絵本・絵巻 / 浄厳院 / 隆堯 / 『発名能可利父子抜書』 |
Research Abstract |
前年度に続き、内容及び伝来の様相から比丘尼御所の尼僧の関与が濃厚である陽明文庫蔵「道書類」について、各書の特定を進め、新たに二つの禅宗仮名法語について翻刻紹介した。まず、抜隊得勝の仮名法語のうち「神竜寺尼長老」に宛てた法語を抄出し、さらに夢窓疎石が母の求めに応じて記したとする夢窓の仮名法語、および「由良長老法語」として無本覚心の法語が付された、三種の禅宗仮名法語の合写である『抜隊法語』を紹介した (『三田國文』55号)。さらに、これまで京都大学図書館本が知られるのみであった『仏國禅師法語』の新出本を紹介し、伝来状況等から両者が近世初期の近衛家周辺で享受された可能性を指摘した(『三田國文』56号)。 いずれも研究代表者の調査・研究の遂行により、新たに見出だされた貴重な仮名法語であり、比丘尼御所の尼僧向けという本書物群の性格を裏付ける要素も認められる。こうした研究蓄積を中心に、物語草子と仮名法語をめぐる最新の研究状況として報告した(伝承文学研究会)。 一方、本研究にかかわる中世寺院圏の物語草子・説話の生成と享受という視点からも、引き続き調査・研究を進め成果を公開した。『説話文学研究』47号では、室町前期の浄土僧隆堯の書写活動に注目し、談義の具体相や比丘尼御所の尼僧が関与した書物との関連を考察した上で、浄厳院蔵『発名能可利父子抜書』を取り上げ、寺院での物語草子の享受や貴顕による宗教的言説の受容の具体相を明らかにした。また、薦僧による女人教化の物語草子である大阪市立美術館蔵『はいかひ』絵巻について、虚無僧の図像展開の様相や一休仮託の仮名法語との相関等からの考察を試みた(ミニシンポジウム)。さらに、貴族圏での享受が想定される庶民物のお伽草子『猿源氏草子』について、物語や説話にあらわれた「鰯」の信仰の様相を分析し、本物語の構造や生成、享受圏について考察した(『鳥獣虫魚の文学史』)。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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