2010 Fiscal Year Annual Research Report
古筆切を中心とする清輔本勅撰和歌集のペリテクストの様態分析
Project/Area Number |
22720093
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Research Institution | Kobe City College of Technology |
Principal Investigator |
舟見 一哉 神戸市立工業高等専門学校, 講師 (80549808)
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Keywords | 古今和歌集 / 定家本 / 清輔本 / 勘物 / 後拾遺和歌集 |
Research Abstract |
本年度は主に以下の三点について研究を進めた。 1貞応元年六月十日書写本『古今和歌集』のペリテクスト…陽明文庫蔵の当該資料には、仮名序から巻六にかけて、清輔本『古今和歌集』の勘物が校合されている。この清輔本勘物は従来知られていた四本とは異なるものである。その内容から、これは永治二年本から仁平四年本への過渡期の清輔本の姿を残す唯一の佚文であると考えられる。本年度は勘物の全文翻刻を行った。考察については執筆済みだが公表は来年度に行う。 2伊達本『古今和歌集』について…清輔本を考える上で常に考慮すべきは定家本の存在である。そこで定家自筆として著名な伊達本の奥書・本文・勘物の分析を行った。その結果、定家本の諸本の本文が定家の古今集研究の成果を随時反映して変化していく、という従来説を否定した。さらに、伊達本は家の証本としてつくられたものではなく、家外のために書写し与えられた本であった可能性を指摘した。口頭発表をふまえた論考は来年度に公表する。 3清輔本後拾遺集のペリテクスト…『後拾遺和歌集』諸本の勘物は、ひとつの清輔本に還元できると考えられてきたが、伝日野俊光筆千種切には重複した内容をもつ二種類の勘物が併存している。勘物の位置から推するに、頭注は清輔本勘物であり、傍注は定家本勘物に由来すると思われる。また、他の本にはない追考も千種切には存するので、復元される清輔本も複数を想定しておく必要がある。つまり、現存する『後拾遺和歌集』の勘物からは、少なくとも前期清輔本・後期清輔本・定家本という三種が復元されると考え得る。詳細な論考は次年度に報告し、千種切の集成・勘物一覧も来年度に公開する。
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