2010 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代を中心とした文学と絵画の相関性の多面的研究
Project/Area Number |
22720096
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
井田 太郎 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (20413916)
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Keywords | 俳諧 / 美術史 / 松尾芭蕉 / 英一蝶 / 酒井抱一 / 文学と絵画の相関性 / 元禄文化 |
Research Abstract |
平成22年度の大きな成果としては、「幻住庵記考」で英一蝶と松尾芭蕉の関係を鮮明にしたこと、俳諧における視覚的要素を解明する研究のパイロット・ケースを行ったことが挙げられる。一蝶と周辺の俳人の研究は当該年度の実施計画にあるものである。一蝶と芭蕉は天和期前後に実交渉をもち、限定的な関係に止まると考えられてきた。しかし、元禄四年に出版された『猿蓑』所収の芭蕉の俳文「幻住庵記」は、一蝶が約十年後に書いた「朝清水記」に緻密に引用されている事実はすでに本研究以前に申請者の指摘したところである。そこで、申請者は「幻住庵記」を通し、実交渉のほかに両者が共有していた要素を当時の社会的立場に探り、身分制の埒外にともにあったことを論じた。元禄文化を大きく彩る画家一蝶と俳人芭蕉の共通性をジャンルを超えて考える基礎を作成した。併せて、「幻住庵記」という俳文、ことばの領域でできたものの形式に、絵画で室町時代以来培われた視覚的な形式が間接的に反映していることを想定することで、文学と絵画という異ジャンルを考察する方法の一パイロット・ケースを提示した。これも申請した計画にあった目標の一つを達成したものである。 また、2011年は酒井抱一の生誕二百五十周年にあたり、執筆要請があったため、次年度に行う予定であった酒井抱一の研究を一部前倒しし、「抱一の俳諧」を書いた。新出資料を多数含むもので、おりからの時宜を得た。紙数の少ない同論文を補足するため(宝井其角が一蝶とも交流をもっていたこともあり、本年度の研究とも大きく関係する)、「抱一と其角」で其角と抱一の文学にとどまらない関係性について論じた。 ただ前倒しを行った分、当初予定していた調査閲覧についてはH22年度内に完了できない部分があった。その分はH23年度に繰越を行い、姫路市立美術館出張などを通して抱一・一蝶に関する作品の閲覧および、最新の知見の収集に努めた。
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Research Products
(1 results)