2011 Fiscal Year Annual Research Report
モダニズム期の文芸誌・美術誌とT.S.エリオットの文化観の考察
Project/Area Number |
22720106
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
出口 菜摘 京都府立大学, 文学部, 講師 (80516138)
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Keywords | T.S.エリオット / モダニズム / 文芸誌 |
Research Abstract |
本研究の目的は、20世紀初頭のモダニズム期における文芸誌・視覚芸術誌を通して、当時の文化的・知的ネットワークのなかでT.S,Eliot(1888~1965)の詩学・文化観を明らかにすることである。本年度は、特にミュージックホールをめぐるモダニストらの発言や態度を中心に考察を行った。エリオットはミュージックホールについてThe Criterion誌だけではなく、The Dial誌においてしばしば言及している。エリオットの見解が掲載されている媒体が文芸誌である点は、ミュージックホールが当時のポピュラーカルチャーであることを示していると同時に、文人らの間にあって注目されているパフォーマンス形態であったことを意味する。つまり、エリオットのミュージックホールへの関心は当時の文化的ネットワークのなかで捉える必要があると考え、English Review誌の編集にあたったFord Madox Fordの手紙にみられるミュージックホールへの言及や他の文芸誌の掲載記事の読解を行った。従来、ミュージックホールへのエリオットの関心は、「高級文化」の担い手であるエリオットがポピュラーカルチャーをいかに自分の詩学に取り入れたかという点から論じられることが多かったが、本年度の考察により「ミュージックホールについて語る」行為がもつ意味とスタイル(様式)ついての知見を得ることができた。また、ミュージックホールのパフォーマンスは、演奏される音楽よりも「視覚的な娯楽」という側面で享受されていた状況を理解ですることができた。これらの知見はミュージックホールの観客の社会階級や当時、階級区分が変化していた事実がエリオットの詩学にいかに関係するか、また、モダニズム期の文芸誌が考えた読者層を考察するうえでも重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果を活発に発表しなかったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
日本T.S.エリオット協会全国大会・シンポジウム「T.S.エリオットと大戦間のイギリス」にパネリストとして参加し、本研究の成果の一部を発表する予定である。
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