2011 Fiscal Year Annual Research Report
米文学におけるボーディングハウス研究およびドメスティシティの概念構築に向けて
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22720110
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
増田 久美子 駿河台大学, 現代文化学部, 准教授 (80337617)
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Keywords | 米文学 / 19世紀アメリカ合衆国 / ドメスティシティ |
Research Abstract |
本研究は「ボーディングハウス」という住環境ならびに文化的現象を立脚点とした19世紀アメリカ文学のテクスト分析を通し、ドメスティシティという概念の構築および同概念による19世紀アメリカ社会の白人中流階級文化の形成を綿密に検討するものである。 平成22年度に発表した論文においては、とくにセアラ・J・ヘイルのボーディングハウス小説を通して、「女性の領域」とされてきた家庭に男性が執着することの必然性や、「男性の領域」とされていた政治思想上の論争に女性が参入する可能性を追究し、白人中流階級文化における性差領域の交差姓を明らかにした。そのようなアメリカ的ドメスティシティにかんする知見をもとに、平成23年度は前年度に引き続いてボーディングハウスおよびドメスティシティにかんする書籍や資料の収集・整理・検討をおこない、分析の対象を19世紀南部再建期の女性の日記テクストに拡大した。 すると、あらたに「自由労働」という社会言説がドメスティック・イデオロギーに深く関わると判明した。そのため、ローラ・タウンという黒人教育にかかわった白人女性の日記・書簡資料をノース・カロライナ大学よりCD-ROM化して取り寄せるとともに、南北戦争期・再建期関連資料、自由労働関連資料、ならびにその他のタウン関連資料の収集・整理・検討を開始した。南北戦争期・再建期アメリカにおけるドメスティック・イデオロギーと「自由労働」の関係性に着目することで、家内賃金労働が白人女性の家庭空間に参入することの意義を追究し、それを女性・人種・移民という視座によるドメスティシティの検討の機会としたい。これらの問題を総合的に考察することによって、さらに多様なドメスティシティの一側面を抽出することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度すでにボーディングハウス小説およびドメスティシティにかんする論文を発表し、今年度はさらに新たな関連資料の収集および分析を開始することができた。また、次の論文執筆の準備も始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、本研究を遂行するにあたり、とくに大きな変更点や問題点等はない。本研究の最終年度にあたる平成24年度においては、ボーディングハウス小説論において得た知見をもとに、女性の日記テクストにおけるドメスティシティと自由労働の関係性についての論文をまとめる。さらに、「ボーディングハウス」「自由労働」「家内賃金労働」という視点から、19世紀アメリカ社会における白人中流階級文化の形成についての考察を深め、ドメスティシティという概念の構築を試みる。
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