2011 Fiscal Year Annual Research Report
中世後期の英文学における記述法としての「驚異」と古典受容
Project/Area Number |
22720119
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
大沼 由布 同志社大学, 文学部・英文学科, 助教 (10546667)
|
Keywords | 中世英文学 / 驚異 / 古典の受容 / 英米文学 / 西洋古典 |
Research Abstract |
本年度の研究成果は、韓国ソウル大学で行われた国際学会で発表した。内容としては、automataとよばれる機械仕掛けの鳥や馬が、中世英文学作品およびラテン語作品でどのように描写されているかを分析した。昨年度の研究により、「驚異」とは個人の認識と深く結び付くものだが、その結び付きの度合いは、時代により異なるという事が分かっていた。つまり、どのようなものが驚異として認識されるかは、認識する人間次第である、という事実が、物語の中で驚異の記述姿勢に反映されるのは、中世になってからと推察されるのである。これまでの研究では自然現象の記述を分析の主体にしていたが、本年度の研究は、中世当時には魔術とも目されたautomataの分析を行った。すると、これもまた、中世においては、自己認識の道具として機能していたことがうかがえた。従来automataといえば、初期近代のものが注目され、機動のメカニズムなども重視されていたが、本研究では、まだ魔術と科学との分水嶺がはっきりしない時代だからこそ、それをどうとらえるかという問題を、自己の認識と結び付けられるのだと言うことを示した。 それに加え、西洋古典と比べた中世の古典認識の独自性についての論文が、オランダの出版社から刊行される研究書に掲載の予定であったが、出版が結局は断念されたため、論文を書きなおして学術雑誌へ投稿し、平成24年11月に出版の予定である。今後の研究の進め方としては、中世人の認識という問題について、驚異に限らず、広く超自然現象がどう捉えられていたかをより深く追求し、神学や科学といった問題も視野に入れながら研究を行う予定である。
|
Research Products
(1 results)