2010 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀フランスにおける詩と造形芸術との創造的交流
Project/Area Number |
22720126
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
桑田 光平 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 講師 (80570639)
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Keywords | フランス現代詩 / ジャコメッティ / 詩と造形芸術 |
Research Abstract |
本研究を遂行するにあたり、まずは日本語/英語/フランス語の基本文献の収集を行った。具体的にはデュブーシェ、ボヌフォワ、デュパン、ジャコテの4人の詩人が刊行した作品を中心に、それらの作家たちに関する研究書、また、彼らと同時代の作家らが残した文学と造形芸術との交流に関する文献を購入した。ジャコメッティに関する著作や論文もできるかぎり探し出し収集したが、雑誌『エフェメール(Ephemere)』と『デリエール・ル・ミロワール(Derriere le miroir)』に関しては高価なため十分に収集できていない。来年度、再来年度は引き続き研究課題に必要な文献を購入する予定である。こうした一次資料を入手した上で、3人の詩人たち(デュブーシェ、ボヌフォワ、デュパン)の美術批評の読解、なかでもジャコメッティに関する文章の読解とそれらの比較対象を行った。ここ数年、ジャコメッティに関する研究書はPierre Schneiderの著作をはじめとして増えてきている。そうした研究書も可能なかぎり参照にすることで、戦後フランスの詩人たちが、ジャコメッティによる芸術の非完結性や真理を把握することへの意志を共有し、それをそれぞれのやり方で自分たちの詩作に反映させてきたことが明らかになった。彼らは、同時代のドミナントな知的/芸術的潮流である構造主義、記号学、抽象表現主義に対する抵抗としてジャコメッティの芸術をとらえており、別の言い方をすれば、ジャコメッティ芸術がもつ時宜を得ない性質、すなわち、時代の流れから逸れるようなアナクロニスムにひとつの価値を見いだしていたといえるだろう。このことは、新しい知の潮流が乱立することになった20世紀後半のヨーロッパにおいて、きわめて特異な現象であり、戦後フランス文学史を考え直すための絶好の資料となるだろう。
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Research Products
(8 results)