2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀フランスにおける詩と造形芸術との創造的交流
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22720126
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
桑田 光平 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 講師 (80570639)
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Keywords | ジャコメッティ / フランス現代詩 / 詩と造形芸術 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き必要文献の収集を行った。雑誌『レフェメール(L'Ephemere)』と『デリエール・ル・ミロワール(Derriere le miroir)』、展覧会カタログ、そしてとりわけシュルレアリスムやボヌフォワに関する研究書や雑誌の特集号などを中心に購入した。予算の執行が物品費に偏ってしまったが、多数の図版カタログを含めてほとんどが関連資料・書籍の購入費であり、論考執筆のための必要経費であった。今年度は、シュルレアリスム関係の文献の読解、シュルレアリスムから脱することになったジャコメッティやボヌフォワのテクストの読解、さらには展覧会カタログや同時代の他の作家たちの証言などから、『レフェメール』という雑誌がどのように誕生したのかを明らかにし、その成果を雑誌『Art Trace Press』に発表した。その延長線上で、ボヌフォワとジャコメッティとの関係性に焦点を当てて、ポスト・シュルレアリスム時代の文芸の可能性について検討を進めてきた(現在も継続中)。ボヌフォワは詩人であるだけでなく、美術史家としてもかなりの知識を有しており、ジャコメッティ以外の美術家や美術潮流(プッサン、イタリアルネサンス、バロック建築など)についても多くを論じている。また、近現代詩に関する知識も一級の研究者のそれだといえる。そのような美術や近現代詩に関する深い知識が彼のジャコメッティを論じたテクストにも明示的/暗示的にあらわれており、ボヌフォワのジャコメッティ論を検討するためには、彼の美術論や詩論をできるだけ総合的に検討する必要があることが明らかになった。このため、今年度はボヌフォワのジャコメッティ以外を論じた美術論と、ボードレールやマラルメを論じた詩論を読み、この詩人の芸術観を少しずつ明るみに出す作業を遂行した。この作業は「美術批評家としてのボヌフォワ」という、よく知られているにも関わらず、まとまった研究がなされていない主題についての研究の端緒となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
資料収集に関しては必要なものを収集できてきている。また、研究成果も少しずつではあるが発表し始めている。雑誌『Art Trace Press』にてその成果の一部を発表しているが、連載なので、今後も継続して発表していく。本書類作成中の現在、新たな原稿を提出したばかりである。また、論考の形にはなっていなくとも、収集した資料の読解は順調に進んでいるといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はパリの図書館やアーカイヴで資料調査にあたりながら、引き続き収集資料の読解を行っていく予定である。当初の予定であったアメリカにおける文芸の流れとの対比は思うようにできていないが、可能な限り同時代のアメリカの美術批評などについても検討を行い、論考などで言及していきたい。またボヌフォワのジャコメッティに対する関係に加えて、デュブーシェやデュパンがジャコメッティとどのような対話を行ったのかについても検討を行う予定である。
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