2012 Fiscal Year Annual Research Report
第一次世界大戦戦争文学におけるリアリズムの構造についての文体論的研究
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22720127
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
久保 昭博 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60432324)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 第一次世界大戦 / フランス文学 / 戦争文学 |
Research Abstract |
本年度は主として二つの方向で研究を進めた。ひとつはフランスの証言文学作品が成立する場をめぐる研究である。「戦闘員作家」すなわち自らの戦場体験を記録した作家たち(すでに職業的作家であった者もいればそうでない者もいる)が、戦後の混乱した時期のなかでひとつの共同体意識をはぐくみ、それがいわゆるエリート主義的な「文壇」と、緊張をはらみつつも共犯的な関係を持つようにいたる過程を、歴史学や社会学のアプローチなどを援用しつつ明らかにした。 もうひとつは文学的言語の民衆化・大衆化に関する研究である。第一次世界大戦の直後から、モダニズムやアヴァンギャルドの詩人や作家が「話し言葉」を積極的に作品のなかに取り入れるようになる。この現象の一側面を、当時の社会的な背景や、さらには言語学の潮流など学問的な背景も考慮しつつ、「文学の民主化」という観点から明らかにした。なお、この研究の一部は、10月24日から25日にかけてパリ第三大学(フランス)で開催された、芸術言語研究センター(CRAL)主催の国際シンポジウム「民主化のプロセスと文学における民衆語の契機」で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、1)第一次世界大戦の証言文学を数多く収集すること。2)これらの文学作品について、形式的側面にも注意を払いつつ分析を行い、文学史的に位置づけること、を二つの大きな柱としている。1については国内外の図書館などにおける資料収集活動が一定の量に達している。また2については、個別の論点について研究を行い、その一部を発表するにいたっている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も引き続き当初の方針に従って研究調査を行う。ただし最終年度となる来年度は、これまでの研究のまとめと発表によりいっそうの力を入れる。具体的には、2013年秋に予定されているCRALの国際シンポジウム、日本フランス語フランス文学会などの機会を利用して報告を行い、その報告をもとに論文を執筆する予定である。
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Research Products
(1 results)