2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720131
|
Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
高橋 愛 法政大学, 社会学部, 専任講師 (80557281)
|
Keywords | ゾラ / 自然主義 / 描写 / 美術批評 / マネ / 印象派 / アカデミスム / ジェルヴェクス |
Research Abstract |
本研究は、『ルーゴン・マッカール叢書』(1871-1893)の小説描写をゾラの美術批評、19世紀の絵画史、写真の受容・発展など視覚芸術との関わりから検討・分析することを目的としている。8月には2週間フランスに滞在して19世紀フランスにおけるアカデミスムとマネ、印象派に関する文献調査・資料の補完作業を行い、平成22年度の研究と合わせて考察を深めた。 今年度は、アカデミスムの影響下にある絵画に示し続けたゾラの視線と小説描写の発展について分析し、研究の成果をとりまとめた。その内容は次のように要約される。 ゾラが美術批評家として実質的な活動を終えた時期に書いた小説『ナナ』(1880)の描写からは、カバネルの《ヴィーナスの誕生》(1863)やマネの《ナナ》(1877)などが鮮やかな輪郭をもって浮かび上がり、それらは当時の芸術動向に対する作者の意識を映し出している。1879年にゾラが「自然主義の仕事を遂行している」と評したジェルヴェクスは1880年以降も『ナナ』を意識した絵画作品を制作するが、これらのナナの肖像からはゾラが期待するような美学上の新しさは生まれてこなかった。「自然主義者」と呼び続けたマネの死とジェルヴェクスのこうした芸術上の展開は、1881年以降、ゾラが美術批評家として沈黙を続けた理由の重要な一部を成していると考えられる。 19世紀における写真の受容とゾラの小説描写との関係については、関連する文献調査と問題系の抽出に関してかなりの成果を得た。この点については、今後の課題のひとつとして研究を継続し、十分に展開していきたい。
|
Research Products
(4 results)