2011 Fiscal Year Annual Research Report
グレバン作『受難の聖史劇』諸写本の研究-作品伝承と詩作技巧-
Project/Area Number |
22720133
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
黒岩 卓 東北大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (70569904)
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Keywords | 仏文学 / 文献学 / 演劇学 / 詩作技巧 / 写本学 |
Research Abstract |
本年度に実施した研究は以下の三点にまとめられる。 まず、アルヌール・グレバン作『受難の聖史劇』の諸写本の内で、本研究課題の主な調査対象であるH写本の転写を引き続き行った。本年度中にはこの写本の実物を閲覧する機会を得、今後この写本を研究していく上での参考とすることができた。また写本閲覧のための調査旅行の過程で、アルヌール・グレバン研究の第一人者であり、以前より共同執筆などを行っているCNRSのダルヴィン・スミスに面会し、『受難の聖史劇』の写本研究に関するアドバイスを受けることができた。H写本の転写作業は来年度も引き続き行う予定である。 さらに、グレバン作『受難の聖史劇』や同時代の劇テクストの詩作技巧研究を続け、その過程で論文が二点発表された。一点はグレバンがモデルとしたとされるウスタッシュ・メルカデ作『受難の聖史劇』とグレバン作『受難の聖史劇』を、作品の日数による区分と詩作技巧の観点から比較したものであり、もう一点は同時代の代表的笑劇『ピエール・パトラン先生』のテクスト伝承において「不規則」とされる詩行が現われる過程を記述したものである。この他海外研究者と共同で論文執筆を行っている。 グレバン以前の『受難の聖史劇』諸作品の把握に努め、グレバン作『受難の聖史劇』が先行する受難劇創作の伝統からどのように影響を受けているかを理解しようと努めた。この研究の成果も、平成24年度以降に発表することを目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請時には想定していなかった職に就き、環境の変化への適応に時間がかかったこと。また昨年三月の大震災により、特に在外研究の機会が減少したこと。
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Strategy for Future Research Activity |
閲覧するべき写本の数を減らし、最大の研究対象であったH写本の転写に専心する。
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