2010 Fiscal Year Annual Research Report
楚簡による戦国文字資料の再検討ー「伝抄古文」と「古璽」を中心にー
Project/Area Number |
22720139
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山元 宣宏 宮崎大学, 教育文化学部, 講師 (60571156)
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Keywords | 古文 / 奇字 / 楚簡 / 説文解字 |
Research Abstract |
近年出土の楚簡を利用して、これまで未開拓の分野であった「伝抄古文」と「奇字」の実体を明らかにする。そして『説文解字』における古文・奇字の関係を整理して、『説文解文』における字体の定例を見いだすことを主眼に研究を行った。『説文解字』に見られる古文・奇字を分析するには、許愼における書体の認識を明確にしておく必要があった。許愼における古文の定義は、『説文解字・叙』に「一日古文、孔子壁中」とあるように、古文とは孔子宅の壁中から出たものであった。また『説文解字・叙』によれば壁中の書とは、魯の恭王が孔子の宅を壊して得た『礼記』『尚書』『春秋』『論語』『考経』である。奇字の定義として、『説文解字』では、「二日、奇字、即古文而異者也」という。このような記述から、奇字とは孔子壁中書古文の異体字であることが理解できる。『説文解字』所収の奇字の実態を確かめるには、まず『説文解字』における古文の実態を確認しておかねばならないのである。そこで『説文解字』収録の古文を、徐在国編『伝抄古文字編』を用いて、各種の資料に見出される字形を、『上海博物館蔵戦国楚竹書』や『郭店楚簡』を中心とした近年出土の楚簡と相互に比較検討して、『説文解字』に収録された古文の原型を推定する資料批判の作業を行った。『説文解字』収録の古文を確定した後、古文の異体字である奇字の実態を確かめる作業を続けている。そして、『説文解字』における楚系文字の使用頻度を探り、『説文解字』の性格を再検討することめざしている。
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