2011 Fiscal Year Annual Research Report
楚簡による戦国文字資料の再検討-「伝抄古文」と「古璽」を中心に-
Project/Area Number |
22720139
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
山元 宣宏 宮崎大学, 教育文化学部, 講師 (60571156)
|
Keywords | 説文解字 / 書体 / 古文 / 古文学派 |
Research Abstract |
『説文解字』叙に基づけば、新の王葬の時の書体には、古文、奇字、篆書、隷書、繆篆、蟲書の六体があるという。これらの書体の名称は当時の古文学派の影響によるものであった。『説文解字』には奇字が5例しかみえないが、王葬の時代に存在した6つの書体の一つとして取り上げられているのである。 そこには「二日、奇字、即古文而異者也」とあり、古文の異体字であることをいう。しかし奇字とは一体どのような書体であり、どういう基準で奇字とするのか未だ疑問である。なぜ奇字が重要視されねばならなかったのか疑問であった。 一方、古文学派としての許愼は、古文を重視したはずである。古文を考える上で無視できないのが近年出土のおびただしい楚簡である。そこで、近年出土の著しい楚簡における研究成果を利用し、『説文解字』における古文と奇字の関係を捉えなおして、古文と奇字を区別した許愼の認識をとらえ、当時に於ける六国文字の認識を再考した。 当該研究は、これまで未開拓の分野である「伝抄古文」の研究を進めることができ、さらにそこから楚系文字に於ける正体と俗体の区別が少しでも明らかになれば、現行の楚簡を釈読する際に有効な視点を提供することになると考える。『説文解字』に見られる古文・奇字を分析するには、許愼における書体の認識を明確にしておく必要があるのだ。 そこで、『説文解字』叙と『漢書』藝文志に記載される書体名の整理をおこなった。その成果を上海華東師範大學で開催された「第3届中日韓漢字文化國際論壇-漢字語料庫標注曁紀念戴家祥先生誕辰105周年學術研討會」において発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『説文解字』に見られる古文・奇字を分析するには、許愼における書体の認識を明確にしておく必要があった。そこで、『説文解字』叙と『漢書』藝文志に記載される書体名の整理をおこない、その成果を発表することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
近年出土の著しい楚簡における研究成果を利用し、『説文解字』における古文と奇字の関係を捉えなおして、古文と奇字を区別した許愼の認識をとらえ、当時に於ける六国文字の認識を再考する。 そして、これまで未開拓の分野である「伝抄古文」の研究を、さらに進める。
|