Research Abstract |
本年度は本研究の完成年度にあたり,朝鮮半島においてかつて存在していた漢文訓読の様々な側面について,中期朝鮮語の諺解資料をもとに追求を行った。その内容をより具体的に記述すると,以下の通りである。1.前年度に引き続き,中期朝鮮語の諺解資料に現れる口訣文と諺解文をコンピュータのソフトウェアを活用し対照させ,データ化する作業を行った。2.その上で,漢文訓読研究において論点になりうるいくつかの特殊な訓法について,考察を行った。その際,日本における漢文訓読研究や漢語文法の知見も充分に参照しつつ,執り行った。3。その結果,朝鮮半島においてかつて存在していた漢文訓読は,釈読口訣資料の現存する高麗時代のみならず,李朝時代に至っても引き続き行われており,中期朝鮮語の諺解資料はその伝統に基づいて作られていることを確認した。言い換えると,当時の諺解資料における口訣文と諺解文は,漢文学習の2つの方式である音読と訓読の伝統がそれぞれ投射されたものであり,諺解文は事実上の漢文書き下し文に相当するものと見なしうることがわかった。4.その他,漢文訓読の痕跡の見られる資料が,従来より知られているもの以外にも存在していることがわかった。 年度末には,以上の研究成果をとりまとめ,東京大学に博士学位論文として提出をするとともに,雑誌論文を発表した。今後も研究期間に得られた知見やデータをもとに,朝鮮半島にかつて存在した漢文訓読について,幅広い視点から解明を続けるとともに,その成果を本務校における専門教育にも還元する予定である。 なお,研究経費については,主として,朝鮮語学の最新の研究成果を参照するための関連書籍の購入,韓国本国における最新の研究成果を収集するための出張,及び研究成果を発表するための経費などにあてた。
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