2010 Fiscal Year Annual Research Report
モンゴル系危機言語であるシネヘン・ブリヤート語の総合的記述
Project/Area Number |
22720163
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Research Institution | Sapporo Gakuin University |
Principal Investigator |
山越 康裕 札幌学院大学, 人文学部, 准教授 (70453248)
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Keywords | 記述言語学 / モンゴル諸語 / ブリヤート語 / 言語類型論 / 危機言語 / 文法記述 |
Research Abstract |
平成22年度は、2点の成果を発表するとともに、継続して現地調査を実施し、一次資料の収集につとめた。以下その内容を示す。 まず、シネヘン・ブリヤート語の音韻・形態論の総合的記述への足がかりとして、当該言語の音韻・形態・統語の概要を記述し、まとめた。この成果は、代表者がこれまで編者として主体的にかかわってきた単行本Grammatical Sketches from the Field.(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所、2011年)の1編として英文で執筆し、刊行された。概要ではあるものの、少なくとも現時点において、シネヘン・ブリヤート語にかんする文法記述としてはもっとも詳細かつ総合的なものである。 さらに、これまで収集・公開してきた一次資料をもとに、シネヘン・ブリヤート語の人称所有小詞について分析をおこない、その成果を「シネヘン・ブリヤート語の人称所有小詞」の題目で『北方言語研究』(北方言語ネットワーク編、2011年3月刊行)に投稿し、掲載された。 この論文では、シネヘン・ブリヤート語の人称所有小詞について、以下2点を明らかにした。1)同系言語であるモンゴル語に比べてシネヘン・ブリヤート語の人称所有小詞のほうが所有者標示のマーカーとして用いられる傾向が強い、2)従属節における主語標識としての機能を有している点を考えると、人称所有小詞が文末に用いられる場合には、いわゆる脱従属化(insubordination)が起こっている可能性が高い、という2点である。 また、さらなる一次資料収集のために、夏季および春季に中国内モンゴル自治区にて現地調査を実施した。現地調査では、一次資料として音声資料以外に映像資料もあわせて収集し、一定量の資料を収集することができた。 ただしその一方で、日程上の都合からモンゴル国での文献収集を実施することができなかった。これについては、平成23年度に改めて実施する予定である。
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Research Products
(2 results)