2010 Fiscal Year Annual Research Report
九州地方の二型音調方言における共通語音声の受容に関する実証的研究
Project/Area Number |
22720164
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Research Institution | Hokusei Gakuen University |
Principal Investigator |
松浦 年男 北星学園大学, 文学部, 講師 (80526690)
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Keywords | アクセント / イントネーション / 日本語 / 方言 / 受容 |
Research Abstract |
今年度は全体の中で準備期と位置付け,長崎方言の追加調査,及び天草島方言の予備調査を行った。 長崎方言の調査においては,複数の語がまとまって句や文を形成するとき,アクセントが音響的にどのように実現するのかを記述した。その結果,前の単語における下降の有無が後ろの単語のFOにほとんど影響を及ぼさないこと,及び,句の枝分かれ構造の違いもFOのパターンにほとんど影響しないということが分かった。この結果はこれまで東京方言などで報告されてきたパターンとは大きく異なり,類型論的観点からも興味深いものである。この成果を国内の研究会,及び国際学会において発表し,論文を投稿した。 天草島方言の調査では,牛深,深海,本渡の集落において,長崎方言の調査で使用してきた調査票を再構成し,約50語の予備調査を行った。この方言では,下降型のピッチパターンに関して,同じ島の中でも大きな地域差が見られることが指摘されていた。今回の調査ではまず,このパターンが現代でも保持されているかを調べた。その結果,ピッチパターンに関しては先行研究で記述されたのとほぼ同じ型を保持していることが確認できた。ただし,話者間で揺れもあり,今後共通語の影響で大きく変化していく可能性がある。次に,語種ごとにパターンに関して,短い和語では長崎方言や鹿児島方言と対応関係が見られた。また,複合語については長崎方言や鹿児島方言と同じく,いわゆる平山の法則(前部要素の型が複合語全体で保持される)どおりになっていた。ただし,前部要素が長い複合語に関しては長崎方言と同じくこの法則どおりにならない場合が多く見られた。今後は個別の方言においてどのような規則性が見られるかに関して詳細にわたる調査が必要である。
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