2013 Fiscal Year Annual Research Report
統語部門と音韻部門のインターフェイスから見る言語の随意性に関する研究
Project/Area Number |
22720165
|
Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
塩原 佳世乃 東京女子大学, 現代教養学部, 准教授 (30406558)
|
Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 英語資料収集 / 英語母国語インフォーマント |
Research Abstract |
本研究はこれまでに「随意性」が指摘されてきた言語現象(特に、動詞句内語順、前置詞残留・随伴を伴う移動・削除など)を、主に音韻論的な重さ(強勢、イントネーション句や韻律語の数)の観点から分析し、語順の選択において真の随意性は存在しないという仮説の妥当性を検証している。これにより、今まで生成文法理論に基づく統語論や最適性理論等で、それぞれ素性の導入や制約の並べ替えのメカニズム等により許容されてきた複数の可能な語順が、統語部門と音韻部門のインターフェイスの観点からは真に同一ではないことを示し、さらには、語順の随意性の研究が最終的には人間の脳内の言語機能全体の在りようの解明に貢献することを目指している。 平成25年度は、これまでに行った日本語・英語の動詞句イディオムを中心とした動詞句内語順と、前置詞残留・随伴を伴う移動・削除現象の分析結果を、日英語の資料を量的質的にを広げるとともに通言語的に検証し、理論的意義についての検討を始めた。あわせて、平成23年~24年に一年間の研究中断があったため、平成25年度は近年の関連トピックを扱う論文や書籍の確認を進め、その中で興味深かった論文の内容を基に、複数の依存関係(特にInterwoven Dependency Constructionを含む wh-movement, scrambling, XP-shift, Extraposition from NP)を含む文の資料を集め、その音韻・統語上の性質を分析する研究論文の執筆を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成23年度~24年度の育児休暇による研究中断、平成25年度の転職(所属先変更)に伴う教育・学内業務従事による研究遅延のため。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成25年度に、近年の生成文法理論に基づく言語研究関連論文のうち、本研究が対象とする「随意性」に関わるものの多くを確認できたため、それらに見られる問題点を中心に必要な言語資料の収集をして分析を進めていく。具体的には、(i)動詞句内イディオムの音韻論的特徴のさらなる分析と、音を媒体としない手話における(動詞句内)イディオムの特徴の調査・分析、(ii)英語以外の前置詞残留の音韻特徴の調査・分析、(iii)英語と日本語に見られる複数の依存関係を含む文の方向性(左への移動か右への移動か)について、先行研究の確認や資料収集、分析をし、研究論文としてまとめていきたい。
|