2012 Fiscal Year Annual Research Report
開成所刊行辞書・単語集の基礎的研究とその翻訳語の研究
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22720176
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
櫻井 豪人 茨城大学, 人文学部, 准教授 (60334009)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国語学 / 洋学資料 / 翻訳語 / 辞書 / 単語集 |
Research Abstract |
本研究の目的は、幕末の洋学研究教育機関である開成所(蕃書調所・洋書調所を改称)から刊行された、西洋語対訳辞書・単語集の編纂方法を追究し、蘭学時代とは異なる翻訳語の存在やその性質を明らかにすることにある。 今年度の成果は、『英和対訳袖珍辞書』(洋書調所1862年刊、以下『袖珍』)初版とMedhurst英華字典(1847-48年刊、以下Med.)との対照を完遂したことにより、前年度作成した『和蘭字彙』(1855-58年刊)の電子テキストを用いて、Med.から『袖珍』初版に取り入れられたと見られる特定したことにある。具体的な成果は以下の通り。 ①『和蘭字彙』に見られない『袖珍』初版の訳語のうち、Med.から抜き出されたと思われる訳語について初めて全数調査を行い、特徴により分類した上で初めてその全ての訳語を示した。 ②Med.からそのままの形で『袖珍』初版に取り入れられた訳語の大半は、それまでの日本語の中に存在していた語か、あるいは日本語の中に取り入れてもあまり違和感のない語であった。しかし、当時の日本には無い事物・概念で、既存の日本語では簡明な訳語が当てられないような語の場合には、やむを得ずMed.の訳語をそのまま記したと見られる箇所もあった。 ③Med.の表記に改変を加えたと見られる訳語には、(1)訓読したもの、(2)意図的に漢字を追加・削除したと見られるもの、(3)一部分を近似する言葉やほぼ同義の漢字に置き換えたと見られるもの、(4)誤記あるいは改悪したと見られるもの、(5)字順を入れ替えたと見られるもの、(6)『和蘭字彙』の訳語とMed.の訳語を組み合わせたと見られるものがあると分析した。 その他、『和蘭字彙』電子テキストの入力チェックや標記の統一を行い、『英吉利単語篇』系統単語集の対照表・索引の作成や解説の執筆にも取りかかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度当初に予定していた、『英和対訳袖珍辞書』初版とMedhurst英華字典との対照を予定通りに終え、近代語学会での発表も計画通りに行うことができた。また、『和蘭字彙』日本語部分の電子テキストの入力チェックを行い、前年度の研究成果を雑誌論文にまとめることもできた。加えて、『英吉利単語篇』系統の対照表・索引作成作業や解説執筆も順調に進んでいる。しかし、それらの作業を優先させた結果、伊藤圭介旧蔵『和蘭字彙』の書入れの調査は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
現在遂行中である、『英吉利単語篇』系統単語集の対照表・索引作成、および解説の執筆作業を4月中に終え、6月中に影印と合わせて出版することを目指す。また、これまで書きためた単語集関係の論文をまとめ、9月中に脱稿し、年度内に出版することを目指す。それと同時に、Medhurst英華字典との対照結果を雑誌論文にまとめ、昨年度行うことができなかった伊藤圭介旧蔵『和蘭字彙』の書入れの調査も行う。研究遂行上の問題点は特に無い。
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Research Products
(4 results)