Research Abstract |
ことばの韻律的特徴に焦点を当て,日本語連続音声の発話生成および知覚において,アクセント,言語リズムが語境界にどのように関与してあらわれるかについて,言語面接調査および言語心理学的手法により,成人,乳児を対象に単語,文の発話・聴取実験およびコンピュータシミュレーションを行なって,日本語における連続音声中からの単語分節の方略と手がかり,それらの発達過程を明らかとすることを目的として研究を行なう.検討にあたっては,韻律特性の異なる2地域,共通語の東京地域といわゆる「無アクセント」方言のひとつ,栃木地域で同様の実験を行ない,結果を方言間で比較する.2010年度は以下の研究を実施し,成果を得た.東京地域で,成人話者を対象に発話生成実験を行なった.実験参加者は30名となった.検査語は,音系列が同一で語境界の異なるペア(例:「ふたえにしてくびにまくじゅず」;「二重にして,首に巻く数珠」と「二重にし,手首に巻く数珠」)を複数個,用意し,ノート型PCを用いて誘導音声および検査語を呈示し,参加者の発話生成を求め,音声収録器に記録した.収集した発話資料のピッチ,音節継続長を計測し,境界と対応して,これらの音響パラメータがどのようにあらわれるかについて調べ,アクセントおよび言語リズムと単語分節の関係性について検討した.発話実験参加者と同一の者を対象に,「のたかまも」のような疑似単語を用い,ピッチ,音節継続長を変化させた合成音声刺激を作成し,参加者に知覚させて語境界を判断させ,アクセントおよび言語リズムと単語分節の関係性も検討した.大規模言語音声コーパスのピッチ,音節継続長を計測して,アクセント,言語リズムと単語分節の関係性を調べ,語境界と対応する音響パラメータを抽出することも試みた.
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