Research Abstract |
音声言語は,即時的,直接的に話者の意図を伝達する,強力なコミュニケーションの手段である.音声言語はほぼ切れ目なく音がつながることにより成される連続体でありながら,われわれはその聴取において,音声連続から単語を切り出し,話し手の意図を理解することができる.従来,音声言語の発話から単語を分節する手続きおよびその発達過程については,ヨーロッパ諸語ではかなり明らかとなっている.これに対し,日本語ではほとんど研究成果の蓄積がない.そこで,本研究では,韻律的特徴に焦点を当て,日本語連続音声の発話生成および知覚において,アクセント,言語リズムが語境界にどのように関与してあらわれるかについて,成人,乳児を対象に音声言語の発話生成および聴取の実験を行なって,日本語における単語分節の方略を明らかとする.平成23年度は,以下の成果を得た.(1)発話生成実験:東京地域を中心に,発話生成資料を収集した,検査語は,音系列が同一で,語境界の異なるペア(例:「ふたえにしてくびにまくじゅず」;「二重にして,首に巻く数珠」と「二重にし,手首に巻く数珠」)である.収集した発話資料のピッチ,音節継続長を計測し,境界と対応して音響パラメータがどのようにあらわれるかについて調べたところ,音節継続長については明瞭な結果が得られなかった.聴取実験の結果とあわせ,総合的に検討する必要がある-(2)聴取実験:発話生成実験と同一の対象者に,聴取実験を行なった.発話実験と同様の検査語および疑似単語を用い,合成音声刺激を作成し,参加者に知覚させて語境界を判断させた-結果については,現在解析中である.
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