2011 Fiscal Year Annual Research Report
統語音韻写像における計算の効率性と韻律的階層関係に関する記述的・理論的研究
Project/Area Number |
22720190
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
土橋 善仁 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (50374781)
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Keywords | 統語と音韻のインターフェイス / フェイズ / 多重書き出し / 経済性の原理 |
Research Abstract |
本研究では、統語部門から音韻部門への写像の特性と、Prosodic Hierarchyと呼ばれる音韻規則の適用領域を規定する階層構造の諸特性を、理論的な観点から考察することを目的とし、計算効率という一種の経済性の原理が統語と音韻の写像関係に対して課されるという考えのもと、現行理論において表示上で規定されているProsodic Hierarchyの諸特性に対して、統語派生の循環性の観点から原理的な説明を与えることをめざしている。当該年度においては、前年度に得られた記述的な観察、特にトピックをはじめとする、いわゆるIntonational Phraseに写像される要素の特性を、複数の言語において検証した。そして、この観察などにもとづき、Prosodic Hierarchyの派生的形成に関する理論的道具立てを提案した。具体的には、統語部門から音韻部門への写像において、ひとつ前の写像のステップまで見ることができるが、それ以上前のステップの情報にアクセスできない、という、計算の負担を減らす条件を提案した。これにより、線形化の帰結としてPhonological Phraseが決定される理論的枠組みにおいて、トピックなどの要素は、統語的な計算(素性照合など)に関わらないとすると、線形化の計算対象からも除外され、他から独立したIntonational Phraseに属すことが導かれることになる。また、韻律部門の自律性も、単なる作業仮説ではなく、同じ計算の負担を減らす条件により説明されることになる。このように、従来の理論では説明されることなく規定されてきた事柄が派生にもとづく理論により説明が与えられることになる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、当該年度において、具体的な仮説の提案をした。そして、次年度開催される審査のある国外の学会に応募し、口頭発表が決定したため。
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Strategy for Future Research Activity |
学会での発表の際のフィードバックなどをもとに、更なる仮説の検証を進めた上で、これまでの研究成果をまとめ、論文を執筆し、査読のある学会誌に投稿する。
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