2011 Fiscal Year Annual Research Report
主要部標示型から依存部標示型へ―歴史言語類型論から見た英語人称代名詞の特異性―
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22720194
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Research Institution | Okinawa International University |
Principal Investigator |
柴崎 礼士郎 沖縄国際大学, 総合文化学部, 准教授 (50412854)
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Keywords | 英語 / 歴史言語学 / 言語類型論 / 文法化 / 言語接触 / 歴史語用論 / 談話分析 |
Research Abstract |
平成23年度に取り組んだ研究項目は以下の通りである。「(人称)代名詞縮約の通時的変化」(項目1)を研究の中心としつつ、関連現象として「否定辞縮約の通時的変化」(項目2)にも着手した。一方で、20世紀以降顕著に確認される非人称詞の談話標識化と、その過程における所有人称詞の生起についても調査を開始した(項目3)。 1.(人称)代名詞縮約の通時的変化(icham>I'm'tis>it's,etc.) 2.否定辞縮約の通時的変化(you aren't>you're not,it isn't>it's not,etc.) 3.非人称詞の談話標識化と所有人称詞の生起について(thing is, ...>my thing is,...,etc.) 項目1については平成22年度に研究発表を二度行い、一つは平成24年度初夏にJohnBenjamins社からの論文刊行が確定され、もう一つは現在執筆中である。項目2については平成23年度に研究発表を行い、既に学会誌に慫慂論文として掲載されている。また、慫慂研究発表の機会を与えられた項目3については現在論文を執筆中である。本研究課題の中心である項目1および2の文献調査およびコーパス検索はほぼ完了しており、国際誌への投稿準備段階である。特に(人称)代名詞縮約の形態依存関係の変化は通言語的に見て異質である一方、先行研究では特別視されていない点で成果刊行の意義は深い。 本研究課題の取り組みから発展した項目3は、次年度以降の研究課題として重要である。人称詞と認識動詞からなる評言節(comment clause)あるいは談話標識の研究史は長いが、非人称詞と繋辞からなる構文の談話標識化の研究は世界的にほぼ皆無に近い。この点については、平成24年4月に開催された国際学会で、英語史研究の第一人者であるLaurel Brinton教授およびHubert Cuyckens教授と確認済みであり、両教授から今後の研究に対して激励された。とりわけ、my thing is, ...等の一人称所有格を伴う表現群は話者の主観性の統語的反映であり、これまでの理論的基盤に対する実証的反例でもあるため、国際的な(共同)研究活動へ繋がる可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題を遂行するためのデータ収集およびコーパス検索はほぼ完了しており、研究成果も年度毎に刊行出来ているからである。研究発表の機会(主として国際学会)も年に数回確保出来ており、これまで以上に広範囲の研究者との(国際)交流も実現できているからである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の達成度は「おおむね順調に進展」としたが、申請者の研究発表の場が概ね国際学会であり、成果刊行先も国際誌が中心であるため、研究発表から刊行までに数年(2~5年うを要する。研究期間が3年あるいは4年と比較的短い点を考え合わせると、国際学会・国際誌中心の研究活動では量的に遅れをとる懸念は拭いきれない。そこで、質の高い成果刊行を効率良く実現するために、国内有力誌からの論文刊行も視野に入れている。例えば、平成23年度に創設された「日本歴史言語学会」などは申請者の研究分野と重なる部分も多く、論文投稿から査読終了まで2ヶ月とされている。つまり、国際誌からの研究論文刊行を中心としつつ、国内有力誌から国際舞台へ向けて論文を刊行することも、研究活動を維持するためには必要不可欠である。
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Research Products
(5 results)