2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本占領下における中国人官吏の日本語能力養成に関する実証的研究-華北地方を中心に
Project/Area Number |
22720200
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
川上 尚恵 信州大学, 経済学部, 講師 (60507713)
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Keywords | 日本語教育史 / 日本占領下 / 中国華北地方 / 官吏 / 日本語学習 / 試験 / 華北政務委員会 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度からの課題であった天津での資料調査を行うと同時に、日本占領下の華北での中国人官吏に対する日本語能力の養成の全体像について分析・考察することを課題とした。これまでの調査・分析の結果は以下である。 日本占領下の華北の四省(河北・山西・山東・河南)三特別市(北京・天津・青島)の省・市公署、政府(以下「公署」)職員に対する日本語能力養成の方法としては、日本語講習(班または会)と検定試験が主であった。その中で、検定試験に着目し調査を行ったところ、『華北政務委員会施政紀要』(二~五周年)の記載では、四省三特別市の中で検定試験によって日本語学習の奨励を行っていたのは北京と青島のみであった。天津市の梢案館での資料調査でも試験実施の形跡は見られなかった。 北京と青島の両市では職員に対して試験による日本語学習奨励策が取られていたが、試験の導入・実施方法には違いがある。このような取り組みは華北の「中央」政府である臨時政府・華北政務委員会の主導によって行われたものではなく、各地域がそれぞれで行っていたものだと思われる。しかし一方で、華北政務委員会によって各省市公私各機関団体の現職者等を対象とした日本語文検定試験も行われていた。両試験の対象者、目的は重複しているようにも見えるが、同様な試験が行われていた理由は何であろうか。また、青島特別市では、治安維持会で行われていた検定試験をもとにして市公署に試験が導入されていたが、先行研究では新民会が同様な試験の導入を検討していたという指摘もある。 昨・今年度で省・市公署職員の日本語能力養成に関する基本的な資料調査は十分行ったが、分析・考察がさらに必要である。また、全体像に迫るためには、治安維持会や新民会などの関与に関しても調査を続けて行く必要がある。
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