2010 Fiscal Year Annual Research Report
「共生社会に向けた異言語教育の在り方」のための基礎的研究
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22720211
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
仲 潔 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (00441618)
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Keywords | 共生社会 / 異言語教育 / 言語観 / 教授法 |
Research Abstract |
本研究の最終的な目標は、共生社会に向けた異言語教育の在り方を示すことにある。そのために平成22年度では、既存の教授法を検討することとした。異言語教育研究においては、「いかに教えるか」、すなわち「教授法」を探求する領域がある。これまでにさまざまな教授法が考案されてきたが、本研究では、研究成果を次世代の教員養成に反映できることを前提にしているため、異言語教育の入門書や概論書において、どのような教授法が取り上げられ、どのように紹介されているのかを批判的に検討した。「英語科教育法」において用いられることの多い文献を対象に、それらにおいて取り上げられている教授法の背後にある言語観を明らかにした。すなわち、「言語」は伝達的な機能という狭い世界観に閉じこめられており、生来的に持つさまざまな機能は無視されていることを問題視した。例えば、伝統的な文法訳読式は、学習者の第1言語の能力を生かした教授法であるが、昨今のように学習者の第1言語が必ずしも均一ではない教育現場においては、必ずしも妥当な教授法とは言えない。また、今日最も用いられているコミュニカティブ・アプローチでは、「コミュニケーション能力」の育成という表面的には教育現場で受け入れられやすいものであるが、その実態は「理想のネイティブ・スピーカー」を暗黙の前提としており、さまざまな文化に根差した諸英語(World Englishes)という社会言語的事実にそぐわないばかりか、日本に在住する諸英語の使い手を排他的に捉える言語観を産み出しかねない。いずれの教授法も、その背後には言語観が見られるのであるが、教授者としては学習者の特性(言語的多様性および学習ストラテジーの多様性)を配慮し、適切な教授法を逐次選択できるようになることを提言した。
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