2012 Fiscal Year Annual Research Report
日本・韓国・中国の国際語としての英語学習者の特徴的文法と理解度に関する比較研究
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22720227
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Research Institution | Fukuoka Institute of Technology |
Principal Investigator |
岡裏 佳幸 福岡工業大学, 社会環境学部, 准教授 (00389397)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 英文エッセイ / ライティングテスト / 国際的理解度 / 理解度判断テスト / 文法テスト / リーディングテスト / 国際情報交換 / 韓国:中国:カナダ |
Research Abstract |
平成24年度において実施した研究の概要は、以下の2点に集約することができる。第1として、前年度にひきつづき、平成24年度においても、異なる社会文化的背景(Sociocultural Backgrounds)を持つ、日本・韓国・中国の英語学習者を対象として、自国の文化に関する英文エッセイを課題とするライティングテスト(Writing Test)をオンラインで実施した。Kachuru & Smith が指摘するように、被験者の英語は、それぞれの母語である日本語、韓国語、中国語と常に接触するため、文法の様々な領域において、各母語の影響を受けていることが、テスト結果からも明らかとなった。全般的には、定冠詞と不定冠詞の区別、可算名詞と不可算名詞の区別の点で、顕著な特徴が見られた。また、動詞(verbs)の使用に関しても、動作動詞(dynamic verbs)よりも状態動詞(stative verbs)を多用する傾向にあることがわかった。 第2に、ライティングテストの調査結果に基づいて、相互の英語学習者間における国際的理解度(International Intelligibility)を測定するための理解度判断テストを作成する準備に取りかかった。理解度判断テストの作成に際して、テストの実施要領についての検討を始めなければならない。そこで、理解度判断テストの形式に関しては、オンラインによる文法テスト(Grammar Tests)とリーディングテスト(Reading Tests)を併用する予定である。さらに、理解度判断テストの対象者として、英文エッセイライティングテストを受験した英語学習者のうち、各国5~10名程度を無作為に抽出する方針を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度において、平成25年度における2つの研究目的を達成するための準備を、おおむね整えることができた。そのため、平成22年度より開始した本研究は、ほぼ順調に進展していると言うことができる。 平成25年度の研究目的は2つある。第1の目的は、英文エッセイによるライティングテストの結果を分析することによって、東アジアを形成する日本・韓国・中国のそれぞれの英語学習者の特徴的文法を明らかにすることである。第2として、これらの特徴的文法を使用した英文エッセイに対する、3カ国間における相互の国際的理解度を解明する。これら2つの目的を達成するための準備として、平成24年度において、日本・韓国・中国の英語学習者を対象に、英文エッセイを課題としたオンラインのライティングテストを実施することによって、特徴的文法を分析するためのデータを収集することができた。また、国際的理解度を解明するための理解度判断テスト実施に向けての準備として、テスト形式、実施方法、対象者など、理解度判断テストの概要についても、既に検討を始めている。当初の予定どおり、本研究の最終年度である平成25年度において、ライティングテストによるデータ収集を継続しながら、理解度判断テストを実施し、理解度判断テストの結果を分析することにより、日本・韓国・中国の英語学習者間における国際的理解度について検証を行うことができる。それゆえ、本研究の進捗状況は、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の最終年度である平成25年度においては、日本・韓国・中国の英語学習者の特徴的文法を明らかにするとともに、理解度判断テストを実施することによって、日本・韓国・中国の3カ国間における相互の国際的理解度について検証する。理解度判断テストの作成、実施においては、ライティング研究、テスティング研究、教育文法研究の第一人者と意見交換、情報交換を行うことによって、研究の妥当性を確認するとともに、トロント大学ロバーツ図書館などで、本研究結果をまとめる上で有効な資料を収集する予定である。また、理解度判断テストの結果を分析する際に、アジア英語の観点は必要不可欠である。それゆえ、本名信行氏(青山学院大学名誉教授)をはじめ、アジア英語の専門家にアドバイスを仰ぐ予定である。 第二言語としての英語学習者による英文エッセイには、学習段階ごとに、かなりの多様性が見受けられ、母語の文法体系、社会文化的背景などが多様性に大きな影響を与えていると考えられる。特に、本研究によって、異なる社会文化的背景を持つ日本・韓国・中国の第二言語としての英語学習者が、それぞれの自国で大学生活を送る段階での特徴的文法の概要が明らかになるものと予測される。今後、アメリカ、イギリス、カナダなどの多文化社会の大学に通う日本・韓国・中国からの留学生を対象として、特徴的文法の解明を試みることを視野に入れている。したがって、本研究による成果を有効に応用する具体的方策を検討しなければならない。
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