2010 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代における書状を利用した社会的情報の共有化と管理に関する研究
Project/Area Number |
22720240
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
野田 有紀子 お茶の水女子大学, 比較日本学教育研究センター, 客員研究員 (20447569)
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Keywords | 書状 / 日本古代史 / 平安貴族社会 / 古往来 / 書儀 / 仮名書状 |
Research Abstract |
本研究「日本古代における書状を利用した社会的情報の共有化と管理に関する研究」は、平安期貴族社会において特定人物に届けられた書状が、本人以外が読み返信し、特定の空間で回覧され、最終的に別人が収集・保存するといった、「書状を利用した社会的情報の共有化と管理」が一般的に広く行われていた事実に注目する。従来、史学的研究対象として扱われなかった墨跡・手鑑・女性書状・古典文学・古往来を含めた、平安期書状を総合的に集成した上で、共有化行動および共有化された書状情報の内容・空間・目的・管理について検討する。これによって書状が情報伝達媒体として平安貴族社会で果たした役割が明確となり、さらに中世以降および中国古代社会と比較することで日本古代の社会的関係の独自性が究明できる。 研究第1年目に当たる本年度(平成22年度)は「書状による社会的情報共有化」研究の前作業として、書状データ収集・整理を始めた。具体的には、(1)日本古代~中世前期の書状(紙背文書などとして現存する書状、古記録・儀式書・古典文学に引用される書状、墨跡・手鑑、古往来)を総合的に集成し、情報共有化データを抽出。(2)古記録や古典文学から、受信後の書状の動きや取扱いがうかがえるデータを収集・整理した。 こうして収集・整理したデータをもとに、まず本年度はとくに平安貴族女性をめぐる書状の動きに注目して研究を進めた。平安貴族社会の女性は日常的に行動を制限されていたが、家族・親族・同階層女性のほか、さまざまな性別・身分・階層の人々と日常的に書状を交わし合い、なかでも女房は書状を用いたさまざまな任務が与えられた。そうした書状情報は平安貴族社会内部に伝達され、共有化されたのである。本研究成果は論文「書状による平安貴族女性の情報伝達活動とその共有化」として公開予定である。
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