2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本古代における書状を利用した社会的情報の共有化と管理に関する研究
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22720240
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
野田 有紀子 お茶の水女子大学, 比較日本学教育研究センター, 客員研究員 (20447569)
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Keywords | 書状 / 日本古代史 / 古往来 / 仮名書状 / 平安貴族社会 |
Research Abstract |
本研究「日本古代における書状を利用した社会的情報の共有化と管理に関する研究」は、平安期貴族社会において特定人物に届けられた書状が、本人以外が読み返信し、特定の空間で回覧され、最終的に別人が収集・保存するといった、「書状を利用した社会的情報の共有化と管理」が一般的に広く行われていた事実に注目する。従来、史学的研究対象として扱われなかった墨跡・手鑑・女性書状・古典文学・古往来を含めた、平安期書状を総合的に集成した上で、共有化行動および共有化された書状情報の内容・空間・目的・管理について検討する。これによって書状が情報伝達媒体として平安貴族社会で果たした役割が明確となり、さらに中世以降および中国古代社会と比較することで日本古代の社会的関係の独自性が究明できる。 研究第2年目に当たる本年度(平成23年度)は、初年度に引き続き、書状データを収集・整理し、それらを詳細に分類・検討することで、「書状による社会的情報の共有化」の実態を明らかにした。具体的にいえば、(1)書状によって共有化される社会的情報の内容、(2)書状によって情報を共有化する空間と範囲、(3)書状によって情報共有化を行う目的、(4)情報共有化の際の管理方法および判断基準についてである。以上の収集データに基づき、論文「平安貴族社会における書状共有化と空間」、および「書状にみる平安貴族子弟の寺院生活と初等教育」の執筆を開始した。以上の二論文は、来年度(平成24年度)に学術雑誌および論文集に発表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ここまでの研究成果を学術論文として年内に発表することはできなかったが、当初予定していた「平安貴族社会における書状共有化と空間」という素材に加え、資料収集の過程で新たに「書状にみる平安貴族子弟の寺院生活と初等教育」という素材を見出すことができ、より多角的に研究テーマを追究できるようになった。したがって総合的には、当研究はおおむね順調に進展しているといえよう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度までに収集した書状データに基づき、最終年度(平成24年度)には研究の総まとめとして、論文「平安貴族社会における書状共有化と空間」、および「書状にみる平安貴族子弟の寺院生活と初等教育」を完成させ、発表する予定である。その推進のために、大学院生を資料収集・整理のアルバイトとして雇用し、効率化を図る。さらに中国古代の書儀との比較のため、中国曲阜にて調査および資料収集を行なう予定である。
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