2011 Fiscal Year Annual Research Report
近世地方の都市・農村間における交流関係の成立と変容過程の研究
Project/Area Number |
22720242
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
多和田 雅保 横浜国立大学, 教育人間科学部, 准教授 (10528392)
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Keywords | 日本史 / 経済史 / 近世史 / 地方都市 / 城下町 / 山林資源 |
Research Abstract |
1.飯田地域における研究では、ア.羽場曙友会生産森林組合所蔵文書などを用いて、17世紀の飯田城下町の町人が上飯田村内に多くの耕地を所持していたことの意味を追究し、近世初頭に領主権力によって人為的かつ急速に城下町が創出されたことが土地所持のあり方に大きな影響を与えたことを発見、かつ、そのあり方が18世紀以後の城下町の構造をも規定した点を見出した。イ.飯田市歴史研究所所蔵「信濃国伊那郡上飯田村田畑山林地引絵図」を詳細に検討し、都市近郊村である上飯田村の内部構造を現状との比較も含めて包括的かつ分節的に検討することができた。ウ.上飯田村や島田村などの百姓が多く近隣の山に入り、伐組を結成して薪などを伐採・搬出し、城下町に大量に売却していたことについて解明し、これを都市近郊村における農村構造の特質として指摘することができた。 2.小布施地域における研究では、ア.基幹史料として位置づけていた近世小布施村林組の名主を務めた平松快典家文書の内容検討を進めた。その結果まず、栗の上納に関する史料を多く翻刻し、林組内において栗の上納を一手に請け負う林守と呼ばれる者が存在し、彼と百姓との関係が組のあり方を規定していることを見出した。また小布施村内において在方市の運営に特化した町組と、栗の生産・領主への上納に特化した林組との間で、村政運営をめぐって競合関係にあることを見出すことができた。さらに小布施村全体の財政に関する帳簿を検討し、同村が林組2つ(松代藩領と幕領)、町組2つ(ともに幕領)の4組からなり、それぞれの利害の組み合わせによってさまざまな財政負担構造があることを見出した。イ.以上の研究と並行して、小布施村町組の名主を務めた関谷矩往家文書の所在を確認し、現地において現状記録調査を進めることができた。同調査は、中性紙封筒などを用いた保存措置を兼ねて進められた。
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