2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720254
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
遠藤 慶太 皇學館大学, 史料編纂所, 准教授 (90410927)
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Keywords | 古代文字史料 / 写経 / 仏教信仰 |
Research Abstract |
本研究は日本に現存する古代写経を対象とし、原本の観察や識語内容の検討を通じて、古写経の銘文である識語の史料的価値を確定し、金石文・木簡などと同様の古代文字史料に参入させることを目的とする。古写経はそのものが奈良時代の肉筆として重要な文化財であるので、日本文学・日本語学・宗教史との連携によって信頼度の高い古写経識語の集成を行なえば、具体的な文字史料を通じて、奈良時代における仏教と社会の関わりを描き出すことができる。 平成22年度は、現在までに判明している奈良時代写経の全点目録を作成し、識語それぞれに番号を与えた。そのうえで識語の翻刻と対照できる精良な写真図版の収集のため、戦前に出された書道史や古筆の図録にまで手を広げ、奈良時代の写経に関する図録・報告書類は系統的に購入した。 また本研究の採択が十一月であったこともあって原本調査の機会を得られず、写経本文の内容検討を優先して開始した。園田女子大学(兵庫県尼崎市)を会場として古写経識語の本文を集中して検討する研究会を設け、歴史学のほかに古代写経と関連のある仏教学・日本語学・日本文学各分野の専門研究者の意見を仰いで識語本文を集中的に討議した。その成果は大阪歴史学会古代史部会(続日本紀研究会)が刊行する学術誌『続日本紀研究』(年6回刊行)において連載を開始、遠藤自身も「上代写経識語注釈(その五)仏説七知経(聖武天皇勅願一切経)」として成果を発表、古写経識語の集成作業について周知をはかった。
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