2011 Fiscal Year Annual Research Report
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22720254
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Research Institution | Kogakkan University |
Principal Investigator |
遠藤 慶太 皇學館大学, 史料編纂所, 准教授 (90410927)
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Keywords | 古代文字史料 / 写経 / 仏教信仰 |
Research Abstract |
本研究は日本に現存する古代写経を対象とし、原本の観察や識語内容の検討を通じて、古写経の銘文である識語の史料的価値を確定し、金石文・木簡などと同様の古代文字史料に参入させることを目的とする。古写経はそのものが奈良時代の肉筆として重要な文化財であるので、日本文学・日本語学・宗教史との連携によって信頼度の高い古写経識語の集成を行なえば、具体的な文字史料を通じて、奈良時代における仏教と社会の関わりを描き出すことができる。 平成23年度は、現在までに判明している奈良時代写経の全点目録を作成し、識語それぞれに番号を与えた。そのうえで識語の翻刻と対照できる精良な写真図版の収集のため、戦前に出された書道史や古筆の図録にまで範囲を広げ、奈良時代の写経に関する図録・報告書類は系統的に購入した。 一方で写経本文の内容検討を継続し、園田女子大学(兵庫県尼崎市)を会場として古写経識語の本文を集中して検討する研究会を設けた。歴史学のほかに古代写経と関連のある仏教学・日本語学・日本文学各分野の専門研究者の意見を仰いで識語本文の確定を目的とし、その成果は大阪歴史学会古代史部会(続日本紀研究会)が刊行する『続日本紀研究』391~396(2011年4月~2012年2月)において順次公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
識語本文の確定作業が進展し、定期刊行物での継続した公表が実現できた。また公表された内容に関する引用・コメントなどの反応もみられ、識語を文字史料として活用する認識が浸透しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
『続日本紀研究』での識語注釈の連載は平成24年度に終了する予定で、それと並行して年号・地名・人名などを抽出した索引の作成にも着手した。 連載内容を含めた識語注釈の集成については出版社と協議し、研究成果を刊行する方向で進めている。そのため識語の注釈・語句索引とともに、研究会において古写経識語を題材とする論考を募集し、その内容を順次報告してゆく。
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