2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22720256
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
原山 浩介 国立歴史民俗博物館, 研究部, 准教授 (50413894)
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Keywords | 婦人運動 / 貫戦史 / 戦争協力 / 消費者運動 / 奥むめお / 市川厚枝 |
Research Abstract |
本年度は、主として基礎的な資料調査を行い、とりわけ戦前期から戦中にかけての婦人活動家の動きをめぐり、奥むめおを軸に据えながら分析を行った。 奥むめおが婦人参政権運動を離れて、「働く婦人の家」など、職業婦人救済の運動に取り組んでいったのは周知の事実である。そうした運動の延長線上に、戦時の「戦争協力」があるわけだが、興味深いのは、この間に、奥といったんは袂を分かった活動家もまた、活動の広がりを持つようになっていく、つまり婦人運動のテーマの拡散がみられるという点である。典型的には、市川房枝らが、婦人参政権運動が一段落したところで、東京の塵芥処理をめぐって、悪臭を放つ焼却をやめさせ、塵芥を他のゴミと分別して回収させようとした取り組みがある。回収された塵芥は、家畜の餌としても利用され、これが戦時になると「資源の有効利用」の文脈で、総力戦体制下の戦争協力の論理へと回収されていく。 戦前に婦人運動が、一定の政治性を有しつつも生活改善への指向を持っていったことそのものの意味と、それらの戦時体制との連続性を、より広く分析する必要が生じたといえる。また、婦人活動家の総力戦体制への包摂のメカニズムを検討する上で、奥むめおのみならず、他の活動家にもどうようの傾向があることがはっきりしてきたことは、今後、分析を進める上で、大きな足がかりとなる。これらを含めて、次年度以降の研究課題の析出と、研究目標への到達の筋道ができた。
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