2011 Fiscal Year Annual Research Report
令前木簡と古代文書の機能論的検討による日本における古代文書行政成立史の研究
Project/Area Number |
22720260
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
山本 崇 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 主任研究員 (00359449)
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Keywords | 令前木簡 / 文書行政 / 帳簿 |
Research Abstract |
本申請研究は、研究がまだ途についたばかりの令前の文書木簡を主たる対象とし、樹種をはじめとした木簡のモノに即した検討と、古文書との比較研究の成果とを踏まえつつ、日本における文書行政の成立過程を明らかにせんとするものである。2年目にあたる23年度は、藤原宮跡出土木簡など畿内及びその近国の木簡について検討をおこなった。 主な成果は次の通りである。(1)奈良文化財研究所『藤原宮木簡三』の編集。本書の対象となる藤原宮跡東面北門付近出土の木簡は、宮内省・中務省との関係が深いこと、図書寮関係の木簡群が含まれており、これらの関係から「御史官」が日本書紀編纂官の可能性が高いこと、などを指摘した。また、今回対象とした木簡の樹種は、ヒノキ科が大半を占め、スギは数パーセントに過ぎなかった。(2)奈良県藤原宮跡の新出事例、滋賀県北大津遺跡出土音義木簡の再釈読成果を学界に紹介した。(3)「壬申の乱と飛鳥寺西の広場-小墾田兵庫をめぐって」において、小墾田宮がミヤケに起源することを指摘し、王権の拠点が宮へと転成を遂げた事例と理解した。(4)「オシテフミ」なる6世紀末から7世紀までに実在した文書を手がかりに、大宝令以前の文書行政を展望する論考を執筆した(現在入稿中)。 なお、上記の刊行物・論考のほか、2012年4月から5月にかけて開催する木簡企画展示「埋もれた大宮びとの横顔-藤原宮東面北門周辺の木簡」において、40点の木簡を展示公開する。本研究の成果の一部は、展示リーフレト及び解説シート(いずれも2011年度作成)において、平易な解説を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に掲げた刊行物は予定通り11年度に刊行し、展示公開は、施設の改修のため11年度末の実施はみおくったものの、2012年4月から5月にかけて実施、終了した。研究の骨格をなす令前文書行政にかかわる論考も現在入稿中で、予定した研究の大半が完了している。
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Strategy for Future Research Activity |
11年度には、発掘調査などの本務との日程調整が困難であったため、出張を伴う木簡の熟覧調査および写真撮影の実施を見送らざるを得なかった。12年度は、研究計画で予定していた地方木簡(石川県金沢市ほか)の調査・撮影を実施し、検討に耐える良質の資料を保管できるよう努めたい。
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